SSブログ

BSシネマ ラルジャン(1983仏スイス) [日記(2013)]

ラルジャン [DVD]
 ロベール・ブレッソンという監督は初めてです。アメリカでは、映画はエンターテイメントでありビジネスですが、映画発祥の国フランスでは芸術の側面を残しているかのようです。
 見終わって?が10個ほど頭に中で点滅、一種の不条理劇なのでしょうが、恥ずかしながら殆ど理解できません。あらすじを書いても、この映画について何一つ語ったことにはならないと思うのですが、あらすじでも書かないと感想文にもなりません。

 イボンという妻子ある若い男の物語です。高校生が偽札を使い、そのとばっちりでイボンは警察に捕まります。偽札を使った店の主人が、そうと知りながらイボンに偽札を渡し、イボンは偽札と知らずに飲食店で使ったために御用となったわけです。このためイボンは勤め先を馘首になり、友人の仕事を手伝うことになります。仕事というのが、これも知らされていなかったのですが、何と銀行強盗の逃走用車の運転。強盗は失敗し、イボンは何ひとつ行動を起こさないままに共犯として捕まり3年の懲役刑を受けます。服役中に、イヴォンの幼い娘は病死し、妻は彼の元を去り、イボンは自殺を図って助かります。
 高校生が偽札を使ったことが、まるで「バタフライ・エフェクト」の様に実直な勤労者イボンの生活を破壊します。

 出所したイボンはホテルの主人夫妻を殺して金を盗み、街で会った見知らぬ老女の家に身を寄せます。イボンは老女一家を斧で惨殺し、立ち寄ったレストランで警官に殺人を自供します。

 これだけです。日常に潜む陥穽に落ちたイボンの転落の物語です。出所後、僅かの金の為に、いとも簡単にホテルの主人を殺し、行き場のないイボンに宿と食事を提供してくれた老女一家を殺します。不条理の罠にかかったイボンは、運命に復讐するように、あるいは自分に降りかかった運命の行き着く先を見届けるように、殺人を重ねます。 
 この不条理劇には、2カ所「神」が顔を覗かせます。老女にはホテルの殺人と殺人に至った過去を告白したようで、イボンに同情した老女は「私が神であればあなたを赦す」と言い、また、自殺を企てたイボンのために刑務所の囚人が祷りをささげるシーンが描かれています。顔を覗かせた「神」をあざ笑うかの様に、イボンは殺人を行います。
 
 イボンのこの唐突と言えるふたつの強盗殺人は何を意味しているんでしょう。原題の“L' ARGENT”は「金銭」という意味だそうですが、金(偽札)のために家族を失ったイボンが、金のために殺人を犯し、金(ラルジャン)に復讐しているとでも解釈するしかないです。

 このイボンの転落を、淡々とカメラが追います。脚本があって俳優が演じる劇と云うよりも、ドキュメンタリーです。物語性は無く、俳優の科白も極端に少ない映画で、イボンの心理描写も殆どありません。事実だけを投げだし、何を感じどう理解するかは観客に任せられています。そのためにか、ひつのシーンが終了しても、観客を自問させる様にカメラはなにもない空間を写し続けます。
 『ラルジャン』は、撮られなかったシーンについて語りかける映画です。そう言えば、BGMが無かった!

監督: ロベール・ブレッソン
出演:クリスチャン・パティ カロリーヌ・ラング バンサン・リステルッチ マリアンヌ・キュオー

タグ:BSシネマ
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0