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映画 白いドレスの女(1981米) [日記(2013)]

白いドレスの女 スペシャル・エディション [DVD]
 原題はBODY HEAT。名画と言うほどのことはないのですが、一部には熱い支持があるようです(私も支持)。30年前の映画ですから古いです、最後のどんでん返しも何処かで見たような読んだような。古いですが侮れません。
 一言で言うと、男を手玉にとって夫を殺害し、遺産を独り占めにする悪女を描いたミステリです。手玉に取られた男からすると、蠱惑的な悪女の手に絡め取られ、ジリジリと奈落の淵へ引きずられる“快楽”を描いています。

 舞台はマイアミに近いフロリダ、季節は「例年になく暑い」夏。弁護士のネッド(ウィリアム・ハート)は「白いドレスの女」マティ(キャスリーン・ターナー)と出会い恋に落ちます。ネッドは、レストランのウェイトレスと情事を重ねる独身の中年で、マティは実業家の夫を持つ人妻。恋と云うよりも、原題の“BODY HEAT”のように、夏の暑さが引き起こした情事です。

 この歳の恋愛と云うものは、一筋縄ではいかないようす。マティに言わせると、彼女の夫は「中年で背が低く“弱い”」。仕事で週末しか帰らない夫を尻目にふたりは逢瀬を重ね、恋は燃え上がります。ここまで来ると、「夫さえいなかったら」という寝物語の一言が実現を見るに時間はかかりません。
 おまけに、マティの夫は一財産持っているようで、夫が死ぬと遺産はマティと姪が等分に相続することが遺言されています。マティは遺言を書き換えて遺産を独り占めにし、ふたりで優雅に暮らそうと持ちかけたりもします。

 ネッドは過去に弁護した青年から時限爆弾を譲り受け、殺害計画を練ります(この青年がなんと若き日のミッキーローク!)。ネッドはマティの夫を殺し倉庫に運び込み、時限爆弾で放火して証拠隠滅を図ります。ふたりは関係をひた隠しにして逢っていたわけで、マティ夫殺しとネッドを結びつける人間は誰もいません。完全犯罪です。
 ところが、マティの家でふたりの関係を目撃されます。ネッドはマティの親友をマティと思って声をかけてふたりの関係を知られ、ネッドが夜忍んできたところをマティの夫の姪に見られています。これが伏線となって完全犯罪が綻びるのかどうか...。

 突然、マティの夫の弁護士から遺産相続の件でネッドに呼び出しがかかります。関係者一同が集まった席で、遺産がマティと姪に等分に贈られるという遺言は無効であり、遺産はすべて妻であるマティが相続することが明らかになります。アレッ、最初からそうだったんでは?ところが、マティの友人の立ち会いの下で、遺産はマティと姪に等分に贈られるという殆ど同じ遺言状がネッドによって再作成され、この新たな遺言状は、文言か何かの都合で、フロリダの相続法では無効であることが明かされます。従って、遺言は無かったことになり、相続人は妻であるマティただひとりとなります。
 ところが、ネッドはこの遺言の作成に携わっていないのです。遺産を独り占めにしたいマティが、ネッドの法律事務所の用箋を盗み、彼のサインを真似て偽の遺言状を作成したわけです。ネッドは嵌められたことになります。いじらしいのはこの期におよんでも、ネッドはマティの愛を信じていることです。

 ネッドの友人、検事のピーターと刑事のオスカーが登場します。刑事オスカーが捕まえた犯人を検事ピーターが告発し、ネッドが弁護するという司法“トリオ”です。このふたりが友人のネッドの無実を晴らそうと“活躍”し、皮肉にもネッドを追い詰めてゆきます。

 そしてネッドに最後の衝撃が訪れます。ネッドに借りのある弁護士が、マティにネッドを紹介したいうのです。ネッドとマティは偶然に出会って恋に落ちたのではなく、夫を殺して財産を独り占めにするために、マティがネッドを誘惑したことになります。ネッドは「愛している」という甘言を信じ、まんまと騙されたわけです。

 マティから、行方不明となっていた被害者のメガネ(殺人事件の重要な証拠)がボート小屋のロッカーにあるという連絡が入ります。そして、ネッドに時限爆弾を供給した青年によって、マティに爆弾を与えたことが明かされ、マティは、ボート小屋にメガネを取りに行くネッドを殺すために殺爆弾を仕掛けたようです。
 これに気付いたネッドは、マティをボート小屋に誘導して自らが仕掛けた罠を自白させ、彼女の口から真実を語らせようとします。マティは、最初は誘惑だったが次第に愛するようになったと告白し、ボート小屋に向かいます。ボート小屋のドアを開ければ、マティは爆発で死ぬわけで、ネッドは今なおマティを愛していることを自覚し、マティの嘘にすがろうとします。ふたりが出会った頃の「白いドレス」を着たマティはボート小屋の闇に消え爆発が起きます。エッ、マティは死んだの?...。

 情事で始まった恋が純愛で終わるという、皮肉なラブストーリーです。フロリダの夏の熱さが生んだ情事と恋、殺人と裏切りのドラマです。キャスリーン・ターナーの悪女ぶりは圧巻で、情事で始まった関係が恋となり、殺人まで犯してしまう男の熱(BODY HEAT)をウィリアム・ハートが好演しています。それにしても、中年の恋は怖いという話しです。『黄金を抱いて翔べ』は大阪の夏の暑さが主人公であると書いた髙村薫にならえば、『白いドレスの女』の主人公はフロリダの夏の暑さですね。ちなみに、マティはしっかり生きています。

 これはお薦めです。

監督:ローレンス・カスダン
出演:ウィリアム・ハート キャスリーン・ターナー

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