BSシネマ リオ・グランデの砦（1950米）

　ジョン・フォード、ジョン・ウェインのコンビの騎兵隊ものです。

　リオ・グランデの砦のヨーク中佐（ジョン・ウェイン）のもとに18人の新兵が送られてきます。180人要望を出したのに来たのは18人、ひとり10人分の働きをしろとか気合いを入れていますが、よく見ると自分の息子が混じっています。士官学校に行っていた息子のジェフは数学で落第して退学、騎兵隊に入ったところが偶然父親のいるリオ・グランデの砦に配属されたという次第です。15年会っていなかったとかで、何か訳がありそうです。

　息子ばかりか、続いて現れたのがなんとヨーク大佐の奥さんキャサリン（モーリン・オハラ）。ジェフを連れ戻しにきたとかで、こちらも15年ぶりの再会。妻と15年ぶりに会ったというのに、抱擁もキスも無しでよそよそしいそぶり。このふたりの謎で引っ張ってゆきます。キャサリンは軍曹（ヴィクター・マクラグレン）とは顔見知りらしく、「放火犯」が軍曹になったとか言っていますが、これもまた謎。

 　ヨーク一家のホームドラマかと思ったのですが、インディアンが攻めてきたりで一応西部劇です。リオ・グランデの砦はメキシコとの国境にある砦で、対インディアン及び国境警備の砦なんでしょう。面白いのは、砦に兵士の奥さんや子供がいることです。女性たちが川で洗濯し子供たちが走り回っています、騎兵隊の砦というのはこういうものなんでしょうか。軍楽隊まであって、私設“合唱隊”がキャサリン歓迎の歌を歌ったり、合唱しながら行軍したりで、まぁサービスでしょうが、なかなか楽しめます。

　サービスというと、2頭の馬に跨る馬術が披露されますが、ジェフと一緒に入隊した新米騎兵タイリー（ベン・ジョンソン）とサンデー（ハリー・ケリー・ジュニア）がスタントマンを使わずにこのシーンを演じたらしいですが、昔の俳優さんはすごいものです。

　さて「謎」です。15年前の南北戦争の頃、シェナンドー河の戦いで、南軍の大尉であったヨークは、命令によってキャサリンの農園を火を放って焼き払っているのです。この時ふたりは結婚してジェフが誕生していますから、自分の農園を焼いたことになります。職務に忠実すぎるヨークに愛想をつかし、以後ふたりは会っていないということのようです。この時火を付けたのが、キャサリンから「放火犯」と呼ばれる軍曹だったというわけです。

　前半はヨーク一家のホームドラマ+αですが、インディアンが登場してからは俄然西部劇です。1950年の西部劇ですから、インディアンは、白人を襲う無条件の“悪役”です。白人が侵略者、インディアンが被征服先住民として描かれるのは、『ソルジャー・ブルー（1970）』あたりからですから、致し方ないでしょう。

　ヨーク中佐に国境を超えてインディアンを追う命令が下ります。砦を留守にするわけですから、キャサリン達女子供を避難させるため、護衛をつけて送り出します。この避難する一隊をインディアンが襲います。護衛の騎兵隊はインディアンを迎え撃ち、護衛に加わっていたジェフが応援を呼びに砦に走ります。ここで先程の新米騎兵タイリーが重要な役割を担います。タイリーは殺人を犯して騎兵隊に逃げ込んだようで、逮捕状が出て逃亡します。このタイリーが登場してジェフを助け、サンディーを加えた三人が、インディアンに拐われた子供の救出に大活躍します。ベン・ジョンソン、ハリー・ケリー・ジュニアは、ジョン・ウェインとともにジョン・フォード一家にようです。ハリー・ケリー・ジュニアは『三人の名付け親』にも出ています。

　

　で、キャサリンとヨーク中佐の関係はどうなるのかというと、予定通り仲直りです。たわいないといえばたわいないですが、後年の愛国的で強いアメリカの体現ジョン・ウェインに比べると、『リオ・グランデの砦』のジョン・ウェインは人間的陰影に富んだ役柄で、好感が持てます。お薦めというほどではありませんが、西部劇の王道という映画ですね。モーリン・オハラの気品は、むくつけい騎兵の中で光り輝くばかりです。。

　ジョン・フォードの西部劇はひと味違います。この映画にも、『怒りの葡萄（1940）』『タバコ・ロード（1941）』のジョン・フォードがチラリと顔をのぞかせているような気もします。

監督：ジョン・フォード

出演：ジョン・ウェイン　モーリン・オハラ　ベン・ジョンソン　ハリー・ケリー・ジュニア　ヴィクター・マクラグレン

タグ：BSシネマ

コメント 1

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます！！
by 郵送の仕方 (2013-07-11 03:47)