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BSシネマ 幻影師アイゼンハイム(2006米) [日記(2013)]

幻影師 アイゼンハイム [DVD]
 原題、The Illusionist。マジシャンが主人公であることから、一見 『プレステージ』に似ています。似ていますがはるかに分かりやすいですね。 『プレステージ』は映画のからくりを理解するために2回も見ましたが、『アイゼンハイム』は1回で十分(笑。

 舞台は19世紀ウィーンです。というと、オーストリア=ハンガリー帝国、ハプスブルグ家ですね。マーラーにブラームス、ヨハン・シュトラウスが奏で、フロイトが夢の世界に分け入り、退廃画家?クリムト活躍した時代です。先日『クララ・シューマン 愛の協奏曲』を見ましたが、あの時代、あのウィーンで、エドワード・ノートンが魔術を披露します(笑。

 家具屋の息子アイゼンハイム(エドワード・ノートン)と公爵の娘ソフィフィー(ジェシカ・ビール)は、マジックが取り持つ縁で親しくなりますが、身分が違う!と引き離されます。引き離されると言っても、少年と少女。
 20年経って、アイゼンハイムは高名な魔術師となってウィーンの劇場で評判を取ります。オーストリア皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)が訪れ、レオポルドの婚約者となったソフィと再会します。ふたりの恋は再び燃え上がり、密会を重ねますが、ソフィーには監視が付き、その行動は皇太子に報告されます。
 このソフィーの監視に当たるのがウール警部(ポール・ジアマッティ)。警部自身アマチュアのマジシャンであり、アイゼンハイムの監視を兼ねて劇場や楽屋に入り浸り、マジックのタネを知りたがったり、小道具を貰って喜んだりします。この禿頭の一見冴えないウール警部こそ、この映画の狂言回しで、重要な役どころです。
 この辺りまで、アイゼンハイムのマジックがたっぷり楽しめます。映画ですから何でもできるわけですが、薄暗い劇場で、灯火のもとに行われるマジックはなかなか幻想的です。これもも映画を楽しむポイントでしょう。

 皇太子はアイゼンハイムの奇術に感心するわけですが、傲岸な性格で、奇術を楽しむよりそのタネ探しにやっきになります。アイゼンハイムを宮廷に呼んで奇術をやらせ、学者にその仕組を暴かせようとします。
 アイゼンハイムも一筋縄ではいきません。石に刺さった剣を抜いた者が王になるというアーサー王伝説を踏まえ、皇太子の剣を舞台に刺し、これを観客に引き抜かせるというマジックを仕掛けます。だれも抜けず、最後は皇太子が登場。これが抜けなかったら王になれないわけで、皇太子に冷や汗をかかせます。実は、後になってこれは伏線だと分かるのですが...。
 これで、ソフィーを挟んだアイゼンハイムVS. オーストリア皇太子レオポルドの構図が出来上がります。

 アイアゼンハイムとソフィーの仲ははますます深まり、駆け落ちしようかという話になります。ソフィは承諾しますが、何しろ皇太子の婚約者、未来の王妃ですからそう簡単にはいきません。レオポルドは、クーデターを起こし父である皇帝に取って代わるという計画を持っており、ソフィーはこの計画の一部に組み込まれているということまで明らかになります(ソフィーの父親が皇太子一派?)。

 二人の仲は、警部によって逐一皇太子に報告されています。警部は、皇太子が皇帝になった暁には、警察署長はては市長の座まで約束されているようで、同じ穴のムジナ。この皇太子は、“女を殴る趣味”があり、すでに女性を殴り殺した前科一犯。あるいは、警部が事件をもみ消したのかと...。

 皇太子は警部を使って風紀紊乱及び詐欺罪でアイゼンハイムの出演する劇場を閉鎖させます。そして事件が起こります。ソフィーは、皇太子に婚約破棄を宣言し宮殿から帰る途中皇太子によって刺され、森の中で死体が発見されます。あれれ、ヒロインが死んでしまっては映画にならない! →どう決着をつけるんだ?
 犯人は前科のある皇太子というのは容易に想像がつきます。アイゼンハイムは警部に真犯人を捕まえるように頼むんですが、まぁ無理。何処からか男を捕まえてきて犯人にでっち上げる始末。こうなったら復讐だ、といのが映画の方向でしょう。

 劇場を閉鎖されたアイゼンハイムは、古い劇場を買い取って降霊術の魔術師として復活し、ウィーン市民の評判を呼びます。ここまで来ると大体わかりますね。殺されたソフィーの霊が現れると、観客はソフィーを殺した犯人は皇太子だと騒ぎ出します。過去にも似たようなことをやっているから、市民だって騙されません。
 遂には皇太子がお忍びでやって来るという事態に発展します。その日もソフィーの霊が登場し、犯人は観客の中にいることを告げると客席は騒然。この衆目の前でソフィーが消え、なんとアイゼンハイムまで幻のように掻き消えます。ヒロインが死んで、ヒーローが消えて、映画は何処へ行くんだ?。

 ここで主役が交代します。あの警部が再登場。何しろ『サイドウェイ』のポール・ジアマッティを起用していますから、皇太子の腰巾着では終わりません。ソフィーの死体から発見された赤いルビー、馬小屋で見つけた緑のエメラルドから、警部は皇太子がソフィー殺しの犯人であることを突き止めます。宝石は、皇太子の剣で、アイゼンハイムが皇太子をからかうためにマジックの小道具として使った剣に嵌められていた宝石でです。
 今更犯人が皇太子だと分かってもねぇ。

 警部は皇太子を追い詰め、皇太子のクーデター計画まで暴き、皇太子は拳銃自殺を図ります。エドワード・ノートンはどうしたんだ! →これでは終わりません、ここから、幻影師アイゼンハイムが観客とハプスブルグ家に仕掛けたマジックのタネが明かされます...なんだ、オチはこれか、です。後は見てのお楽しみ。

 エドワード・ノートンというと『25時』の麻薬の売人、『ファイト・クラブ』の不眠症のセールスマンと、ひとクセある役が印象に残っています。今度は19世紀のマジシャン、ちょっと勿体無い気もします。
 お薦めかというと、ラストの10分で評価が分かれると思いますが、19世紀のウィーンを楽しむと思えば、それなりに見ることができます。 

監督:ニール・バーガー
出演:エドワード・ノートン ポール・ジアマッティ ジェシカ・ビール

【余談】
 宮廷でのマジック・ショーで、アイゼンハイムはオーストリア皇帝の肖像画を描くシーンがあります。この皇帝とは、時代と場所からいって、絶世の美女と謳われたあの「王妃エリザベート」の夫フランツ・ヨーゼフ1世です。とすると、映画に登場する皇太子レオポルドはエリザベートの息子ということになります。エリザベートの息子にはひとり自殺したのがいたなぁ、と調べてみると、女優や娼婦と遊びまわり、最後は心中をはかったルドルフというのがいました。皇太子レオポルドのモデルはルドルフですねぇ。エリザベートが出てこなかったのが返す返すも残念。

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