映画 さらば、わが愛/覇王別姫(1993香中) [日記(2013)]
京劇の劇団に入団したふたりの少年が、日中戦争から国共内戦を経て中華人民共和国と文化大革命の波にもまれながら、京劇俳優として生きた50年の映画です。
小楼と蝶衣は、京劇の俳優養成所のような所で少年時代からともに育ち、「覇王別姫」の虞美人と項羽を演じることで、擬似男女関係に増幅されたわけです。
この感情は、女形の蝶衣だけにあって小楼にはありません。菊仙は蝶衣と小楼の関係に嫉妬しますが、小楼は蝶衣に恋愛感情を抱いていませんから、普通の嫉妬とは少し違います。蝶衣によって自分たちの平穏な生活が壊されるということでしょう。
この感情は、女形の蝶衣だけにあって小楼にはありません。菊仙は蝶衣と小楼の関係に嫉妬しますが、小楼は蝶衣に恋愛感情を抱いていませんから、普通の嫉妬とは少し違います。蝶衣によって自分たちの平穏な生活が壊されるということでしょう。
蝶衣が入ったのは、京劇の俳優養成所のようなところですが、ハッキリ言ってタコ部屋。シゴキにつぐシゴキで、セリフや所作が覚えられないと鞭が飛び、逆らえば折檻。このタコ部屋で蝶衣をかばうのが小楼で、庇護する者とされる者が兄弟の関係を超えて擬似男女関係に発展します。
蝶衣は、「女に生まれて・・・」というセリフがどうしても憶えられず、どうしても「男に生まれて」と間違えます。小楼が、煙管を蝶衣の口に突っ込んでこれを矯正し、「女に生まれて・・・」と言えるようになるのですが、口元から血まで流して...象徴的ですねぇ。蝶衣は、小楼によって女に生まれ変わります。
ふたりは、元宦官の邸で「覇王別姫」を演じ絶賛されます。蝶衣はこの宦官の部屋に呼ばれ、そういうことになります。宦官ってチョン切っているわけですけど(笑。
という話があって、小楼と蝶衣は京劇の大スターとなります。小楼は娼館の売れっ子菊仙と結婚し、小楼がいっこうになびいてくれない蝶衣は、京劇のパトロン袁と関係を結びアヘンに溺れます。
(長くなるのでひとっ飛び)「文化大革命」の嵐が3人を襲います。裏切り、密告が横行し、小楼と蝶衣は、京劇のスターですから旧弊として吊し上げられ自己批判させられます。
京劇の衣裳と隈どりの姿で吊るしあげられる項羽・小楼と虞美人・蝶衣は、まさに「四面楚歌」。京劇であれば、項羽は「虞や、虞や、若を奈何んせん」と詩を吟じ、虞姫は自殺し、最後の一戦に臨んだ項羽も自らの首を刎ねます。
文革で四面楚歌になった小楼も自殺するのかと思ったのですが、紅衛兵の脅しに耐え切れず、蝶衣を裏切って保身に走ります。蝶衣が京劇の旧弊に毒されていたこと、アヘン中毒だったこと、おまけに同性愛者として袁と関係があったことまでバラしてしまいます。これを聞いた蝶衣はどうしたか。小楼は仕方がないとしても蝶衣は映画のヒロインですから、日本の劇空間であれば、自害して果てるはずです。ところが、蝶衣も小楼の妻が娼婦であったことをバラしてしまいます。実は、この吊し上げの場に菊仙が来ているのです。蝶衣は積年の確執をこういう形で解決しようとしたのでしょうか。
多くの知識人が転向し、周恩来さえ保身を図らざるを得なかった文革ですから、仕方がないと言えば言えますが、この泥仕合は興ざめです。文革の悲劇は描かれていますが、「覇王別姫」に蝶衣と小楼を重ねたストーリーは何処かへ消えてしまいました。
紅衛兵に、「妻を愛しているか」と問われた小楼は、「愛していない」と声高に叫びます。この後、菊仙は縊死します。
という話があって、小楼と蝶衣は京劇の大スターとなります。小楼は娼館の売れっ子菊仙と結婚し、小楼がいっこうになびいてくれない蝶衣は、京劇のパトロン袁と関係を結びアヘンに溺れます。
京劇の衣裳と隈どりの姿で吊るしあげられる項羽・小楼と虞美人・蝶衣は、まさに「四面楚歌」。京劇であれば、項羽は「虞や、虞や、若を奈何んせん」と詩を吟じ、虞姫は自殺し、最後の一戦に臨んだ項羽も自らの首を刎ねます。
文革で四面楚歌になった小楼も自殺するのかと思ったのですが、紅衛兵の脅しに耐え切れず、蝶衣を裏切って保身に走ります。蝶衣が京劇の旧弊に毒されていたこと、アヘン中毒だったこと、おまけに同性愛者として袁と関係があったことまでバラしてしまいます。これを聞いた蝶衣はどうしたか。小楼は仕方がないとしても蝶衣は映画のヒロインですから、日本の劇空間であれば、自害して果てるはずです。ところが、蝶衣も小楼の妻が娼婦であったことをバラしてしまいます。実は、この吊し上げの場に菊仙が来ているのです。蝶衣は積年の確執をこういう形で解決しようとしたのでしょうか。
多くの知識人が転向し、周恩来さえ保身を図らざるを得なかった文革ですから、仕方がないと言えば言えますが、この泥仕合は興ざめです。文革の悲劇は描かれていますが、「覇王別姫」に蝶衣と小楼を重ねたストーリーは何処かへ消えてしまいました。
紅衛兵に、「妻を愛しているか」と問われた小楼は、「愛していない」と声高に叫びます。この後、菊仙は縊死します。
11年が経ち、再会を果たした蝶衣と小楼は、昔のように項羽と虞美人に扮して「覇王別姫」を舞います。ラストで、蝶衣は小楼の挿している剣をそっと抜くシーンで幕。京劇では、この剣で虞美人が自刃するらしいですが、蝶衣もこの剣で自殺したのか?はたまた小楼を刺し殺したのか?。
いずれにしろ、『覇王別姫』で描かれたのは、中国近代の動乱に揺れる異形の愛です。
京劇の役者という特殊な世界、緊張のある人間関係、光が感じられるような映像、蝶衣の妖艶等々、「文化大革命」までは素晴らしいです。
で、お薦めかというと・・・難しい。
出演:張國榮(レスリー・チャン) 張豊毅 鞏俐
何かのシネマ紹介で観たことがあります。
「文革」時代の中国をちょっとだけ知る立場にあったので、いくらか勇気が要りそうです。
by cocoa051 (2013-12-07 08:59)
文革は最後の10分だけです。残りは全部三角関係&精神的ホモセクシュアル。中国共産党公認?の映画ですから、まぁボカシテあります。
by べっちゃん (2013-12-07 09:57)