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映画 オープン・ユア・アイズ(1997西) [日記(2014)]

オープン・ユア・アイズ [DVD] バニラ・スカイ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
 『アザーズ』『海を飛ぶ夢』のアレハンドロ・アメナーバルの監督作品です。
 open your eyes ですから「起きなさい」「目を覚ましなさい」ですね。こういうサスペンス映画の感想をネタバレ無しで書くのは困難です。一言で言うと『マトリクス』の世界に近いです。

 冒頭で、目覚し時計に起こされたセサールは早朝の街(マドリッド?)に出かけます。不思議なことに、街には人ひとりいず静まり返っています。ナンダ?と思った瞬間、セサールのベッドサイドで目覚まし時計が鳴ります。無人の街はだったというわけです。
 主人公の青年セサール(エドゥアルド・ノリエガ)というのが、莫大な親の遺産を引き継いだイケメンで、同じ女性とは2度関係は持たないというモテぶり、男の理想的な姿です。セサールは、そうした女性のひとりヌリア(ナイワ・ニムリ)に付きまとわれています。パーティーでソフィア(ペネロペ・クルス)に出会って恋に落ち、ソフィアのアパートから朝帰りの時、待ち伏せしたヌリアの車に乗せられます。何と、ヌリアは車を崖下に落としセサールと無理心中を図ります。ヌリアは死にセサールは助かりますが、顔面が潰れ二目と見られぬ怪物となってしまいます。金ならある!と医師に整形を迫りますが、現代の医学では如何ともしがたく、イケメンのセサールは怪物として生きるハメになります。セサールを演じるエドゥアルド・ノリエガも美形ですから、この落差は大きいですね。当然ソフィアには冷たくされ、セサールは運命を呪うわけです。

 これがまぁ前提なのですが、ここまでで「冷凍睡眠」のニュースが何度か出てきます。不治の病にかかった人間を、治療可能となる未来まで「冷凍保存」するというビジネスの話です。これで大体の想像がつきます。ネタは明かされますが、観客にはそれを忘れさせるように新しい謎が提出されます。
 ところが新しい治療法が開発され、セサールの顔は元に戻ります。さぁこれで口説きまくるぞ!ではなく、一度不幸を経験していますから心を入れ替え、今度はソフィア一筋です(笑。この映画のペネロペ・クルスは芳紀23歳、そのペネロペが威勢よく脱いでくれますから、それだけでこの映画を見た価値があったというもの、眼福々々(笑々。
 ところがです、そのソフィアがヌリアに入れ替わります。何のことかというと、セサールがベッドで目覚めると隣に寝ていたのはソフィアではなく死んだはずのヌリアだったのです。ソフィアを何処に隠した、と大騒ぎ。ソフィアの部屋にあった写真から、友人の証言まで何から何まで、ソフィアはヌリアに置き換わっていますから、これは見ている方も驚きます。セサールだけではなく、観客も、あのソフィアのヌードは夢幻だったのか!。まるで「スパイ大作戦」の世界です(そんな作戦があったような)。
 おまけに、セサールは殺人罪で(精神病患者専用)刑務所に放り込まれます。エッ誰を殺したんだ!。

 夢、怪物の顔、冷凍睡眠の三題噺です。もう分かりますね。

ネタバレ
 「三題噺」で想像がつくと思いますが、ソフィアからヌリアに変わったのは夢の中の出来事だからです。以後、映画はずっとセサールの夢を描いています。では何処から夢の世界に変わったのか?。(冷凍睡眠会社の社長によると)セサールがソフィアを酒場に呼び出し、酔ってソフィアにからんで振られます。セサールはソフィア(に付いてきた親友)を追いかけて泥酔の末道路で寝てしまいます。ここで目覚めてから、夢が始まります。
 ソフィアがセサールを優しく介抱するのも夢、顔が元に戻るのも夢、ソフィアがヌリアにすり替わるのも夢、殺人罪で刑務所に放り込まれ、精神科医のケアを受けるのも夢です。
 セサールは、夢の中でソフィア→ヌリアすり替わの秘密を探り出します。セサールは「冷凍睡眠」の会社にたどり着き、会社の社長から全てを知らされます。セサールは、この会社に金を払って冷凍睡眠の処置を施され、顔の整形が可能となるまで150年眠っていたのです。これも夢の中で知るわけですから、「社長」は、セサールの夢の中に現れることが出来る、すなわち夢をコントロールできるのですねぇ。
 もう夢から覚めても大丈夫ですよ、さぁopen your eyes!・・・で幕。

 セサールは、なによりソフィアの愛を取り戻すため自分の顔を元に戻したかったのだと思います。しかし、未来の医療技術で自分の顔を取り戻しても、150年後の世界にソフィアはいません。open your eyes!、ここから始まるセサールの孤独を考えると、けっこう残酷な映画です。
 もうひとつ、夢の中でセサールの精神病を治療する医師が登場します。娘がふたりいて幸せな家庭を持っていると言っていますから、医師はセサールの夢の世界で暮らしていることになります。セサールが夢から醒めると、この医師の存在は失われてしまいます。夢から醒める決意をしたセサールの前で、この医師は頭を抱えます。セサールの想像の産物に過ぎないと言ってしまうには、あまりにリアルな存在で、夢の中にもうひとつの現実世界があるのではなかろうかと想像してしまいます。セサールを主体とする夢の世界と、その世界で生きる住人たちの世界の二重構造を垣間見させるシーンです。

 夢と現実の境界があいまいになれば、そこにはどんな風景が広がっているのか?、という具合にこの映画には解決できないテーマが色々詰まっていそうです。
 open your eyes!、わたしも何時かその声を聞くのかもしれません。そういえば、 『アザーズ』『海を飛ぶ夢』も、精神世界が現実を越える映画でした。

 トム・クルーズ主演で、ハリウッドでリメイクされています(『バニラ・スカイ』2001)。リメイク版でも、ソフィアをペネロペ・クルスが演じているようです。
 好き嫌いがはっきりする映画なので、無条件でお薦めというわけにはいきません。

監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:エドゥアルド・ノリエガ ペネロペ・クルス

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