畠中 恵 しゃばけ [日記(2014)]
妖(あやかし、妖怪)に守られた廻船問屋の一人息子、一太郎を主人公とした、「大江戸妖怪推理小説」です。
一太郎は、廻船で運ぶ薬を商う「薬種問屋」を任され、「若旦那」と呼ばれていますが、実態は病気ばかりしているひ弱な「若だんな」。一太郎を救けるのが、廻船問屋の手代佐助と薬種問屋の手代仁吉。なんとこのふたりが、それぞれ犬神と白沢という妖怪です。この三人を中心に「屏風のぞき」、「鳴家(やなり)」、「野寺坊」、「獺」などの妖怪が次々と現れてストーリーを盛り上げます。妖怪など、最近は「六条御息所の生霊」以外に縁がありませんから、なかなかストーリーに乗れません。
ここで若だんなは、手下の妖怪を総動員して捜査を始め、名推理を展開します。これは、妖怪が職人に憑依した殺人では無いか?。探偵の方が妖怪なので、犯人も当然妖怪なのは分かりきったことです。読んでいる方は早くから気づいていますから、小説も半ば過ぎて言われても困ります。
どんな妖怪が現れるのかと思ったのですが、これが何と百年を経た道具に憑いた付喪神。道具も年をふると霊性を帯びるということのようです。この付喪神になり切れない「なりそこない」の付喪神が、人に憑いて付喪神になるための薬「反魂丹」を求めて薬種問屋の主人を殺していたのです。
ドラえもん+鬼太郎のヴァリエーションのような小説です。『鬼太郎』の妖怪が跳梁跋扈する世界で、ひ弱な若だんな(のび太クン)をドラエモン(妖怪の佐助と仁吉)が助けて事件を解決します。『ドラエモン』と異なるのは、若だんなはひ弱なだけではなく、時には佐助と仁吉を超える知恵と行動力を発揮するところでしょうか。
シリーズ化されるほどのベストセラーだそうですが、この手小説にはノレません。同じ妖怪なら、夢枕獏『陰陽師』の方が趣味に合っています。
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