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映画 昼下がりの情事(1957米) [日記(2014)]

昼下りの情事 [DVD]
 『麗しのサブリナ』で中年オヤジのハンフリー・ボガードをキリキリ舞いさせたオードリー・ヘプバーンが、今度はゲイリー・クーパーを相手に小悪魔?を演じます。この映画にも、ヘプバーンの父親が登場し重要な役割を演じます。個人的には、ヘプバーンよりクーパーより、この父親役のモーリス・シュヴァリエに惹かれます。
 原題の“Love in the Afternoon”を「昼下がりの情事」と訳した宣伝マンは、なかなか商売気がありますね。このタイトルだと、あの『ローマの休日』のヘプバーンがクーパーと情事をやらかした、ということになってしまい、お客は映画館に押し寄せます(だったかどうかは?)。小説『情事の終わり』の映画化を『ことの終わり』とした宣伝マンは、『昼下がりの情事』を知らなかったわけではないでしょうが。

 舞台はパリ、時代は何時だっていいです。『ローマの休日』はローマの観光案内のような映画でした。パリ、ローマは、1,950年代のアメリカ市民の憧れの都だったのでしょう。『サブリナ』では、ヘプバーンはパリに留学し、ラストでボガートと向かう先がパリです。

 パリの私立探偵シャバッス(モーリス・シュヴァリエ)は、リッツに滞在するアメリカ人の浮気調査をしています。ロンドンに出張中の夫の目を盗んで浮気する人妻との密会を写真に収め、依頼主に渡します。依頼主は、アメリカ人を殺してやると拳銃を振り回し、これを隣室で聞いていたのが、シャバッスのひとり娘のアリアーヌ(オードリー・ヘプバーン)。チェロを学ぶ学生で、日がな下手くそなチェロをギーコギーコやっています。

 アリアーヌは見過ごしにできずリッツを訪れ、このアメリカ人フラナガン(ゲイリー・クーパー)に事情を話し、件の人妻の代役をやることになります。そこへ拳銃を構えて依頼主が現れ、フラナガンはあわやというところでアリアーヌに救われます。これが出会いで、中年男は小悪魔に振り回され、小悪魔は中年男をキリキリ舞いさせ、いつしか中年男の魅力にハマるという映画です。

 フラナガンは、アメリカの大富豪の貿易商で、世界各地を飛び回り、行く先ざきに恋人がいるというプレイボーイ。パリでのそのひとりが拳銃を持って乗り込んで来た男の妻だったというわけです。シャバッスはフラナガンの行状を事細かに調べ上げファイルにしています。アリアーヌはこのファイルを読んでフラナガンのプレイボー振りを知り、いくら彼が口説いても容易に心を許しません。フラナガンは、アリアーヌを招いたリッツの部屋に楽団を呼んで「魅惑のワルツ」を演奏させ、ワルツに乗ってダンスに興じます。アリアーヌは、中年男の財力と手練手管に次第に傾斜してゆきます。
 これは、『サブリナ』のハンフリー・ボガードとヘプバーンと同じ構図で、もっと露骨な、中年男の毒牙にかかる銀幕の「妖精」という構図です(笑。
 従って、アリアーヌは、フラナガンの夜の誘いには絶対に乗りません。会うのはいつも午後。従ってタイトルは“Love in the Afternoon”です。父親のジャッバスは、このアリアーヌの不審な行動を心配しますが、これは『サブリナ』の父親トーマスに他なりません。

 この楽団は笑わせます。モーリス・シュヴァリエに次ぐこの映画の目玉です。第1バイオリン、第2バイオリン、フルートとマリンバのカルテットで、フラナガンとアリアーヌのあるところ、常に「魅惑のワルツ」を演奏します。リッツの部屋は勿論、ふたりがボートに乗れば楽団はボートで追いかけ、終いにはフラナガンが出かけたサウナで演奏する有り様。この楽団の奏でる「魅惑のワルツ」というのは、ひょっとして、現実には存在しない幻であり、ビリー・ワイルダーの仕掛けた「哲学的表現」なのかと思ってしまいます。

 アリアーヌも、プレイボーイのフラナガンに負けてはいません。父親のファイルにあったフラナガンの恋人の夫をボーイフレンドに見立て、如何に恋多き女性であるかを自ら演出します。アリアーヌにすっかり参ってしまったフラナガンは、彼女の正体を知るために探偵の元を訪れます。そう来るか?です。この探偵こそ(例の拳銃男が紹介した)ジャッバスに他なりません。フラナガンの依頼を聞き、調査対象がアリアーヌであることを知ったジャッバスは...、という映画です。

 ゲイリー・クーパーは『モロッコ』『誰がために鐘は鳴る』『真昼の決闘』の大スター。この時56歳で、28歳のヘプバーンとダブルスコア。『サブリナ』同様に違和感があります。まぁヘプバーンだけを見ていれば問題はありませんが(笑。中年オヤジをターゲットした映画です。

監督:ビリー・ワイルダー
出演:ゲイリー・クーパー オードリー・ヘプバーン モーリス・シュヴァリエ

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