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映画 星の旅人たち(2010米西) [日記(2014)]

星の旅人たち [DVD]
 原題は‘The Way’。亡くなった息子の遺志を継いで、鎮魂のため聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅をする父親の物語です。
 「サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼」とは、フランスからピレネー山脈を越えスペインへサンティアゴまでの1500kmの巡礼の旅を言います。この1500kmを、巡礼宿に泊まりながら中世さながら徒歩で旅します。日本で言えば、熊野三山に詣でる熊野古道の巡礼道、四国八十八ヶ所のお遍路道のようなものでしょうか。

 カリフォルニアの医師トム・エイヴリー(マーティン・シーン)は、放浪の旅に出たまま息子ダニエル(エミリオ・エステベス)が、ピレネー山脈で亡くなったことを知らされます。トムは妻を無くし、生き方の異なるひとり息子とは疎遠になってる、孤独な人間です。
 息子の遺体を引き取るためフランスにやって来たトムは、ダニエルが巡礼の旅の途中、ピレネー山脈で遭難死したことを知ります。ひとり息子の、しかも確執の末に疎遠となった息子の死は、老年を迎えた父にとっては辛い話です。トムは、息子を火葬し、遺灰を持って、ダニエルの果たせなかった「サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅」を始めます。息子と「同行二人」というわけです。失意の父親が巡礼の旅によって慰められ、魂が浄化されるという物語です。父が子を偲ぶ切なさは、世界共通です。
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 年間10万人が訪れ、1ヶ月にも及ぶ巡礼の旅ですから顔見知りなる巡礼者も生まれます。
ダイエットのために巡礼道を歩くオランダ人のヨスト(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)
禁煙のために(実はそうではない)巡礼するカナダ人のサラ(デボラ・カーラ・アンガー)
スランプに陥ったアイルランド人の作家ジャック( ジェームズ・ネスビット) 
の3人が、トムと行動を共にするようになります。
 トムは、巡礼道の要所要所にダニエルの遺灰を撒き、ダニエルの遺志を果たしてゆきます。息子の遺志を継いだ巡礼というものが楽しいはずは無く、トムは偏屈親爺として煙たがられる存在です。トムの巡礼の目的をヨストが知り、サラ、ジャックが知ることで4人の関係が変化します。偏屈親爺が、けなげな父親に変わったわけです。

 これと言ってドラマはありません。トム、ヨスト、サラ、ジャックが相前後して巡礼道を歩き、宿に泊まり、トムは息子の遺灰を撒きます。彼等を包む自然、巡礼宿、巡礼者との交流などを見るだけで、こちらも巡礼をしている気分になります。
 バスで十八ヶ所を廻る日本の巡礼と比べると、中世の巡礼者さながら毎年10万人の人々が黙々と歩く姿は、信仰の違いを感じさせられます。もっとも、サラはiPodで音楽を聞きながら、ヨストは土地々々の名物料理を食べながら歩くわけですから、観光の側面も持っているのでしょうね。

 ちょっとした事件が起こります。トムの荷物が盗まれます。大切な遺灰を盗まれ、さぁこれからどうするんだという時に、犯人の父親が息子とともに現れます。彼等はジプシーで、謝罪を込めて一族の宴会に4人を招待します。トムと息子ダニエルの関係のバリエーションです。父親は、巡礼の旅が終わったら遺灰を大西洋に撒くことを薦めます。

 4人はサンティアゴ・デ・コンポステーラに到着し、巡礼修了の証明書を貰います。トムは、息子の名前でこの証明書を貰い受け、遺灰を大西洋に撒いて巡礼は終了します。
巡礼者の物語は、本当はここから始まるのです。ヨストはダイエット(痩せたとは思えない)の後どうするのか?。サラは娘との別離の傷は癒えたのか?、ジャックはスランプを脱して何を書くのか?、そしてトムは、帰国して息子を失った喪失感にどうやって立ち向かうのか?。

 監督で且つ息子のダニエルとして登場するのが、『ヤングガン』でビリー・ザ・キッドを演じたエミリオ・エステベスです。マーティン・シーンとは親子でから、息子が父親を主役に作った映画ということになります。
 『サン・ジャックへの道(2006仏)』とよく似ています。こちらもそれぞれに事情を抱えた8人の巡礼者が、旅で自分と向き合い解決の道を見出すという物語です。

 で、お薦めかというと、面白いうというよりも、トムの孤独と喪失感が胸に迫る映画です。熊野古道を歩いてみようかなと思わせる、そんな映画です。


監督:エミリオ・エステベス
出演:マーティン・シーン デボラ・カーラ・アンガー ジェームズ・ネスビット ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン

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ktm

フランス、スペインにあるロマネスクの教会を回っていると、時折りホタテ貝を付けた巡礼者に会います。
皆さん、1日約40kmの道程をよく歩くなと感心します。
by ktm (2014-10-30 10:48) 

べっちゃん

ほたて貝は巡礼の印だそうですね。この映画を見て、熊野古道を歩いてみたくなりました。
40kmはキツイですね。ヒザをやられそうです。
by べっちゃん (2014-10-30 20:26) 

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