浅田次郎 赤猫異聞 [日記(2015)]
赤猫とは、伝馬町牢屋敷に火災が迫ったときに緊急避難としてとられる囚人の「解き放ち」措置のことです。鎮火の後、戻ってきた囚人は、罪一等を減じられ、戻らなかった囚人は追捕され死罪となります。『赤猫異聞』は、明治元年に起こった「解き放ち」を題材に(実際にあったんですかね?)、江戸から明治に移る時代の一側面を見事に描いています。
明治8年に「監獄」が設置され、新政府は江戸幕府の伝馬町牢屋敷の囚人を引き継ぎます。空白の8年間、400人の囚人を誰がどのように管理したのか?。世間から不浄役人と呼ばれた同心(獄吏)達の、職務を賭けた意地と心意気の物語です。華々しい革命であった明治維新も、伝馬町牢屋敷というフィルターを通して見れば、また違った姿が見えてくるという、浅田次郎の巷談です。伝馬町牢屋敷同心:中尾
囚人(牢名主):深川一円の博打を仕切る繁松
囚人:夜鷹の元締め白魚のお仙
囚人:新政府の兵士8人を暗殺(辻斬り)した旗本の次男坊・七之丞。
伝馬町牢屋敷鍵役:杉浦
繁松は、博徒の親分の罪を被って罪人となり、牢名主に推される器量人。親分は賄賂を使って遠島の罪を死罪へと変え繁松殺害を目論みます。
お仙は、無理矢理に奉行所与力の情婦にされ、貢がされ、与力は挙げ句に新政府に阿ってお仙を売り渡します。
七之丞は、鳥羽伏見、彰義隊で生き残り、幕府に忠義を立てひとり新政府と戦うという御家人。
博徒、娼婦、新政府の兵士暗殺という、いずれも薩長の意向を汲んだこの時代ならではの罪人です。
一人でも帰ってこなかったら、帰ってきたものは死罪
三人とも帰ってくれば無罪放免
誰も帰らなかったら丸山小兵衛が腹を切る
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