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子母澤寛 新選組遺聞 [日記(2015)]

新選組三部作 新選組遺聞 (中公文庫)
 子母澤寛、新選組三部作の第2巻です。新選組は、栗塚旭のTVドラマ『新選組血風録』を見て以来のファンで、小説、映画等けっこう見たり読んだり。司馬遼太郎の正調『燃えよ剣』から、浅田次郎の『一刀斎夢録』まで、実に様々な「新選組」が描かれていますが、子母澤寛の三部作は以降の小説、映画の元となった言わば元祖「新選組」ではないかと思います。

 本書は、新選組が最初に屯所を置いた京都壬生・八木家当主・八木源之丞の息子、八木為三郎などの聞き書きを元に、近藤勇の手紙等を加えた、ノンフィクション・ノベルです。この昭和3年の八木為三郎翁の聞き書きというのが、実に生々しく面白いです。翁は、昭和6年に82歳に亡くなっているそうですから、新選組が誕生した翌文久3年(1863)には13~4歳ということになります。同年に芹沢鴨暗殺、翌文久4年(1864)が池田屋事件、元治元年(1865)には屯所を西本願寺に移しますから、新選組勃興期から最盛期にかけて近藤、土方、沖田と接するという、歴史の証人ということになります。昭和3年に聞き取りが行われ、翁は昭和6年に亡くなっていますから、まさに間一髪で間に合った「新選組」ということになります。

 例えば「芹沢鴨暗殺」当夜です、

 日が暮れたし、父はいず、私と弟の勇之助と二人が、もう寝ようというて、玄関の左手にある寝部屋へ行くと、真っ暗な中で、私達の床の中に、女が一人でしゃがんでいるのです。びっくりして逃げ出してきて、母(おまさ)へ告げると・・・

この女とは「輪違屋糸里」のことで、臨場感たっぷりです。

(後に為三郎翁が母から聞いた話では)十二時頃に、誰か玄関の障子を開けて静かに入ってくるものがあるのです、・・・「今時分誰だろう」・・・入ってきたのはどうもからだつきの様子で土方歳三のようなのです。その土方が、足音を忍ばせて、芹沢の寝ている室の唐紙を細目に開けて、中を覗いている。

 土方は、芹沢がグッスリ寝込んでいることを確認しに来たわけですね。この後暗殺が行われ、おまさは、沖田総司と原田左之助の姿を見ています。

 私が気がつきました時は、家内中大さわぎで・・・私も怖いもの見たさに、芹沢の死骸を見ると、下帯もない真ッ裸で、全身何処が斬られているのか、血だらけになって、私の布団の上へうッ伏しているのです。刀は持っていませんでした。

 芹沢は、お梅と同衾していた部屋から逃れて為三郎少年が寝ていた部屋に逃れ、そこでトドメを刺されたわけです。『燃えよ剣』や『輪違屋糸里』を読んでからこれを読むと、迫力が違ってきます。
 などなど、本書の中核である「壬生屋敷」「池田屋斬込前後」は(新選組ファンには)圧巻です。

 新選組が歴史の表舞台に登場するのは、文久3年(1863年)~慶応3年(1867年)のわずか5年間です。慶応4年、明治元年(1868年)には、戊辰戦争で敗れ、近藤勇は下総流山で捕まって斬首され、沖田総司は結核で亡くなり、明治2年(1869年)には土方歳三は函館で戦死します。わずか7年の光芒です。
タグ:読書
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