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映画 兵隊やくざ(1965) 正、続、新、脱獄、大脱走 [日記(2016)]

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 増村保造の『赤い天使』が面白かったので、同監督の『兵隊やくざ』を見たのですがこれが面白い。ついつい続編以下都合5本見てしまいました。

 昭和18年、大宮貴三郎(勝新太郎)と有田上等兵(田村高廣)コンビが、満州の関東軍を舞台に大暴れするアクションコメディです。東映の任侠スターが高倉健なら大映は勝新太郎、勝新太郎の代表作は、『座頭市』とこの『兵隊やくざ』じゃないかと思います。高倉健の『網走番外地』と『兵隊やくざ』はともに1965年に封切られ1972年までシリーズ化されます。
 1965年(昭和40年)、大東亜戦争が終わって15年ですから、軍隊経験があり内務班、関東軍、慰安婦という文言が身近な世代が大勢生き残っていた時代の映画です。
兵隊やくざ.jpg
 『兵隊やくざ』の魅力は、型破りな二等兵、大宮貴三郎(勝新太郎)とインテリの有田上等兵(田村高廣)のコンビの魅力に尽きます。元ヤクザで直情径行、浪花節が得意で喧嘩はめっぽう強く酒と女に目がない大宮二等兵。方や、幹部候補生試験をわざと落ち、将校を拒否して一兵卒に甘んじる軍隊嫌いの大卒インテリ、有田上等兵。いわば陸軍のはみ出し兵士のふたりが主人公です。大宮二等兵が事件を起こし、有田上等兵がフォローするという、ボケとツッコミのこの落差のあるコンビが何とも魅力的です。

 大宮、有田の軍隊への視点が興味深いです。大宮にとって軍隊とは、三度の飯が食え給料まで貰って酒と女に不自由しないという天国です。有田にとっては、階級と「ビンタ」が支配する自由の無い世界で、兵役明けの除隊が唯一の希望という不条理の世界です。軍隊に対するこのふたつの理解は、当時の兵士の代表だと思われます。
 内務班は、初年兵一人に上等兵一人が付き、上等兵は初年兵を教育し初年兵は上等兵の身の回りの世話をするという教育制度です。この制度で有田は大宮の真っ直ぐな性格を愛し、大宮は有田を慕うようになります。内務班は班長に統率される25名程度の兵士で構成され、5つ内務班で戦闘単位の中隊が形成されます。粗っぽく言うと、兵卒→班長(曹長、軍曹=下士官)→中隊長(大尉、スタッフとして中尉、少尉=将校)という階級制度となります。
 最下級の兵卒が下士官、将校を相手に大立ち回りを演じ一泡吹かせるのですから、痛快です。 

 このシリーズで徹底しているのは、下士官、将校を悪役とし、有田、大宮の属する兵卒の造反有理の構図です。建て前と階級、年功序列、「ビンタ」が支配する日本型組織の悪しきプロトタイプ内務班で、条理(義理)本音(人情)を通す二人のはみ出し者の物語です。歩兵と砲兵、中隊内での内務班と炊事班の抗争が描かれますが、いずれも無理がまかり通る不条理に大宮と有田の怒りが爆発し殴りこみとなるあたりは仁侠映画です。『兵隊やくざ』の「やくざ」は、大宮貴三郎一人を指すのではなく、軍隊組織そのものを指すのかも知れません。製作側にそんな意図はないでしょうが、陸軍をヤクザ社会に見立てたほとんど任侠映画です。

 もうひとつの特徴は所謂「慰安婦」です。 大宮が通う慰安所の娼婦で、外地の軍隊でもっとも身近な女性といえば慰安婦となるのでしょう。慰安婦は、『独立愚連隊』、『赤い天使』にも登場しポピュラーな存在だったようです。今回見た5本の内、4本に慰安婦が登場します。第一作では慰安婦・音丸に淡路恵子が絡み『新』で大宮は慰安婦・瑳峨三智子結婚してしまい、 『脱獄』では敗戦せまる満州から慰安婦・小川真由美を逃がすという、兵卒と慰安婦の交流が描かれます。日本からはじき出されて大陸に流れてきた慰安婦たちは、陸軍の底辺である兵卒を同類と考えて大宮、有田と接し、二人の反逆と脱出を支援するというわけです。
 
 40年前の映画ですが、痛快無比面白いです。 
 
監督:増村保造
出演:勝新太郎 田村高廣

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