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映画 麦秋(1951松竹) [日記(2016)]

あの頃映画「麥秋」デジタル修復版 [DVD]
 『麦秋』は、『晩春(1949)』『東京物語(1953)』とともに、原節子演じる主人公の名前をとって「紀子三部作」と云われます。『晩春』は、婚期を過ぎた娘と娘の結婚を心配する父親のホームドラマでした。『麦秋』は、妹の結婚に心悩ます兄と、その家族の物語です。このテーマは、『秋刀魚の味』(1962、遺作)でも繰り返されます。この父親と兄を演じるのが、笠智衆。三宅邦子、東山千栄子、杉村春子等小津映画の常連が脇を固めます。笠智衆と東山千栄子は『麦秋』では母と息子、『東京物語』では老夫婦を演じています。 
 
 
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 『麦秋』は娘を嫁がせる父親の喪失描かれましたが、『晩春』では家族の崩壊が描かれます。崩壊というほど深刻なものではなく、子供が成長し新しい家族を持つことで、それまであった家族の形が変わるというだけのことです。『麦秋』の家族は、 笠智衆、三宅邦子夫婦に幼い二人の息子、菅井一郎、東山千栄子の老父母と笠智衆の妹原節子の7人家族。核家族化が未だ進まない1951年当時の平均的な家族構成でしょう。この7人家族が、原節子の結婚を期に父母が生まれ故郷に去り、4人の核家族となります。

 原節子=紀子の結婚にも工夫が凝らされます。28歳にもなって独身の紀子に、父母と兄は気を揉んでいますが、本人はいたってノンキ。丸の内の会社に勤め、友人の淡島千景と独身を謳歌しています。淡島千景のキラキラした溌剌さが実にいいです。
 上役が紀子に縁談を持ってきます。相手は、40歳ですが四国の旧家に生まれたさる企業の役員で遣り手のビジネスマン。両親と兄はこの話がすっかり気に入り、紀子に結婚を薦めます。煮えきらぬ紀子の態度に周囲がヤキモキするうちに、紀子は突然結婚相手を見つけてしまいます。
 その相手とは、近所に住む兄の後輩で妻を亡くした子持ちの男性。秋田に転勤することが決まり、男の母親・杉村春子が紀子のような娘が息子の嫁に来てくれればどんなにいいかと言ったことから、紀子は唐突にこの男性との結婚を決意します。このシーンの杉村春子の演技は職人技。紀子の決意を聞いた父母と兄のため息もまたみどころです。
 この唐突な決意を、紀子は、いつも使っているハサミをどこかに置き忘れ、偶然見つけたようなものだと言います。

 紀子は結婚して秋田に去り、故郷に帰った老父母、菅井一郎と東山千栄子の平安な日々で幕。平安ですが、7人家族が解体された姿です。

監督:小津安二郎
出演:原節子 笠智衆 淡島千景 三宅邦子 菅井一郎 東山千栄子 杉村春子

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