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映画 柘榴坂の仇討(2014日) [日記(2016)]

柘榴坂の仇討 [DVD]
 原作は浅田次郎の同名小説( 『五郎治殿御始末五郎治殿御始末 (新潮文庫)』所収)。時代劇は比較的裏切られることがないので、機会があれば見ることにしています。一時、『隠し剣 鬼の爪』など藤沢周平原作の海坂藩ものが作られました。藤沢周平、山本周五郎原作というと間違いありません。最近では『武士の家計簿』や『超高速!参勤交代』もあるのですが、アレあは時代劇とはチョット違う?。『柘榴坂の仇討』は、『壬生義士伝』の浅田次郎と中井貴一のコンビで、正統派時代劇?です。
 安政7年、井伊直弼を暗殺した「桜田門外の変」の外伝です。正真正銘の『桜田門外の変』は真っ当すぎて面白くなかったのですが、明治6年の仇討禁止令を下敷きに、事件を側面から捉える浅田流「外伝」は見せます。

 井伊直弼を暗殺された側ではなく暗殺された側、井伊直弼の近習・志村金吾(中井貴一)の物語です。60名を超える彦根藩士が、わずか18名(脱藩水戸藩士)の襲撃を防げず藩主を殺され首まで討ち取られたのですから、警備責任者の金吾は責任を取らされます。金吾は襲撃者に奪われた家康拝領の槍を追っていたため、主君を守れなかったという設定になっています。金吾は切腹を禁じられ、襲撃者を探しだしてその首を直弼の墓前に捧げるという、仇討の命令を受けます。

 時代は明治に代わり、最早幕府も彦根藩も無くなったにもかかわらず金吾は仇を探し続けま
す。道場の同僚は羅卒となって新政府に仕えていますが、金吾は彦根藩が捨てられないのです。明治4年に断髪脱刀令が出たにもかかわらず、髷を結い袴をはいた二本差しの侍の姿。妻(広末涼子)は、針仕事と飲み屋の下働きをしながら夫を支えるのですから、絵に書いたような 夫唱婦随。

 こんなエピソードもあります。金吾は、金貸が士族に借金の取り立てを迫る場に出くわし、相憐れむの情から金吾は割って入ります。金吾の姿を見て、金貸の用心棒は匕首を抜いて武士がナンダ!と凄みます。この時、ことの成り行きを見守っていた群衆の中から、元○○藩近習、元幕府XXと、職人や商人に身をやつした元武士が続々と姿を現します。

 道場の元同僚から、金吾が追う仇の消息がもたらされます。仇討ちは殺人罪となる「仇討禁止令」が出た明治6年のことです。司法省の高官(藤竜也)は、13年もの間世に雌伏していた金吾を讃え、仇もまた雌伏していたことを伝えて、敵討ちを忘れ新たな生き方を勧めます。

 金吾は、名前を変え車引き(人力車夫)として身を隠していた直吉(阿部寛)に会いに行きます。 折から、13年前の「桜田門」と同じの雪の日。ふたりはさりげない会話で相手の腹を探り合い、 「桜田門外の変」から13年の歳月を噛みしめます。金吾は直吉の引く人力車乗って柘榴坂に差しかかり、その坂が直吉が自刃しようとして果たせなかった場所であることを知らされます。直吉は金吾に斬られようと身を差し出し、金吾は刀を与えて勝負を挑みますが斬ることができません。金吾は、直吉が13年間柘榴坂に座り続けていたことを知り、直吉も、金吾が13年間、桜田門の井伊直弼の籠の側に立ち尽くしていたことを知ります。
 忠義、信義、矜持、情、そのすべてを降り積む雪が包み込みます。血と暴力と日本的叙情に、雪はまことによく似合います。
柘榴坂2.jpg 柘榴坂1.jpg
安政7年桜田門             明治6年柘榴坂
監督:若松節朗 
出演:中井貴一 阿部寛 藤竜也 広末涼子 高嶋政宏 中村吉右衛門

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