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映画 否定と肯定(2016英米) [日記(2018)]

否定と肯定 [DVD]
 何を否定し何を肯定するのか?、ナチスのホロコーストです。ホロコーストはあったのか無かったのか?、という映画です →実はそうでもないですが。
 アウシュビッツに象徴されるホロコーストは、自明のことで疑ってみたことはありません。無かった(あったにしても小規模で限定的)とする意見もあるようで、これを争った1996年の”アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件”に基づく映画です。

 ホロコースト肯定の立場に立つアメリカの歴史学者デボラ・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)は、ホロコーストを否定するイギリス歴史学者デイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)に名誉毀損で訴えられます。アーヴィングのホロコースト否定説の著作がデボラによって非難され、名誉を傷つけられ損害を被ったというわけです。
 アーヴィングが訴訟をイギリスの法廷に持ち込んだことで、被告のデボラは自らの無罪を実証することとなります(アメリカでは立証責任は原告)。デボラは、弁護士ジュリアス(アンドリュー・スコット)とランプトン(トム・ウィルキンソン)とともに裁判に臨みます。ジュリアスが、依頼人と接触し弁護方針を立てる事務弁護士、ランプトンが法廷で弁論を受け持つ法廷弁護士です。事務弁護士、法廷弁護士という制度はイギリス独自のものらしいです。アメリカ映画では両者を兼務し、弁護士はひとりですから、この設定は新鮮です。

 アーヴィングは弁護士を雇わず、自ら自説の正当性を主張しデボラの批判は根拠のない名誉棄損に当たることを告発します。受けて立つデボラの弁護団は、ホロコーストの生き残りを証人として呼ばず、被告のデボラも証言台に立たせない、という方針をたてます。普通であれば、ホロコーストの証人を出廷させ、強制収容所で何があったかを明らかにしアーヴィング説を論破するところです。ホロコーストを論点にすれば、問題が問題だけに非難の応酬、泥試合となることは目に見えています。泥試合を避けたわけです。

 弁護団は「搦め手」からアーヴィングに攻め込みます。20年にわたる彼の日記を読み、講演を検証し、著作は原典に遡るという地道な作業から、彼は偏見に満ちた反ユダヤ主義者であり、アーヴィングの著作は事実の歪曲と改ざんから成り立っていおり、歴史学者などではなくアジテーターに過ぎないことを証明します。
 弁護も大詰め差し掛かった時、裁判長は法廷弁護士ランプトンに問います。反ユダヤ主義者のアーヴィングの信念に基づく発言(著作の記述)なら、嘘と非難できないのではないか、と。エッ、確信犯罪は無罪?。
 で判決はというと、デボラは無罪。信念に基づくものであっても、事実の歪曲、改竄は正義の名の下に認められないと。
 『否定と肯定』は、法廷戦術、駆け引きを見せ場とする法廷ものです。今さらホロコーストの存在を云々する映画を作っても...ということでしょう。物事は「搦め手」から、という映画です。ちょっと毛並みの変わった法廷ものとして(地味ですが)おすすめ。

監督:ミック・ジャクソン
出演:レイチェル・ワイズ トム・ウィルキンソン ティモシー・スポール アンドリュー・スコット

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