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映画 『ザ・ロード』『ザ・ウォーカー』『ウォーキング・デッド』 [日記 (2020)]

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 映画を見れば原作が気になり、原作を読めば、映画が気になります。ピューリッツァー賞作、コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』(2006)の映画化の話です。この『ザ・ロード』を原作に2本の映画『ザ・ロード』と『ザ・ウォーカー』が作られています。

ザ・ロード(2009米)
 原作に忠実な父と子の物語。動植物が死に絶え、わずかに生き残った人類は食料を求めて略奪と殺人が横行する世界を、父親と幼い息子が南を目指す、どちらかというとサバイバル映画。父親が息子を護り、息子も父親に応える父子情愛のストーリーです。小説の宗教色は希薄で、まして、回想で登場するシャーリーズ・セロンの不倫などは描かれていません。

 冒頭に「エレミア書」19章6が出てきます。検索すると「大いなる者も小さき者も、この地に死ぬ。彼らは葬られず、また彼らのために悲しむ者もなく、自分の身を傷つける者もなく、髪をそる者もない。」とあります。分かりやすいですが、原作の「神」のイメージではありません。マッ、これはこれで「父と息子」の映画としては鑑賞に耐える映画です。出演者はスターが揃っています。

監督:ジョン・ヒルコート
出演:ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー、シャーリーズ・セロン、 ロバート・デュヴァル、ガイ・ピアース

ザ・ウォーカー(2010米)
 息子は登場せず、原作の「火を運ぶ」というモチーフを活かし、主人公が滅んだ世界で聖書を復刊させるという物語です。『ザ・ロード』を原作とした旨の注釈はありませんが、デンゼル・ワシントン演じる主人公に原作に登場する老人イーライの名を与えていますから、『ザ・ロード』が原作・原案です。また原作の「火を運ぶ」というキーワードは、イーライが運ぶ「聖書」という具体的な姿が与えられ、父と子は南を目指し、イーライは西を目指します。
 それだけでは面白くないので、聖書を探す街のボス、ゲイリー・オールドマンを登場させます。オールドマンの役柄は、聖書を使ってイエス、民衆の支配者となること。宗教が支配のアイコンだというアイロニーが面白い!。『JFK』でオズワルド、ドラキュラ伯を経て『レオン』で麻薬中毒の刑事で世に出たゲイリー・オールドマンは、こういうひとクセのある役はピッタリ。原作を換骨奪胎?、イーライは剣の達人でならず者を斬り殺し、オールドマンは改造車を駆って機関銃をブッ放しとエンタメ性も盛り沢山。聖書は点字で書かれており、オールドマンには読めなかったというオチも拍手喝采。映画としてこちらの方がはるかに白いです。

監督:アルバート・ヒューズ アレン・ヒューズ
出演:デンゼル・ワシントン ゲイリー・オールドマン ミラ・キュニス

ドラマ・ウォーキング・デッド(2010米)
 このドラマもやはり『ザ・ロード』の影響がありそうです。ゾンビによって破滅した世界のサバイバルですが、父親リック(アンドリュー・リンカーン)、息子カールの父子の情愛というものがテーマのひとつとなっています。面白いのは、原作にある母親の不倫が描かれること。夫が死んだと思ったカールの母親は、母子を守る夫の同僚シェーンと関係し、夫が戻った後、娘を出産します。リックはシェーンの子かも知れな娘を育てます。
 もっともシーズン10(2019)まであるシリーズモノですから、様々な人と出会い、共同体同士の抗争が繰り広げられる群像劇に発展します。

 2007年にピューリッツァー賞を受賞しベストセラーとなった『ザ・ロード』のインパクトは大きかったと言えます。

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