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角田房子 閔妃暗殺 新潮文庫 [日記(2006)]

閔妃(ミンビ)暗殺―朝鮮王朝末期の国母

閔妃(ミンビ)暗殺―朝鮮王朝末期の国母

  • 作者: 角田 房子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1993/07
  • メディア: 文庫


 日本の外交官が首謀者となり、朝鮮の王族を暗殺するという暴挙がかつて存在した。暗殺されたのは、朝鮮で国母と呼ばれた李朝二十五代国王の后閔妃。暗殺を指揮したのは当時の朝鮮駐在公使。日本政府の代表が一国の王に等しい人物(実態は、王は閔妃の傀儡だった)を暗殺するという近代国家としてはありえない事件である。「閔妃暗殺」は、日清戦争から日韓併合に至る日本の帝国主義を、希代の王后・閔妃を軸に描いたドキュメントである。

 

 閔妃をヒロインとする物語りは、権力闘争に閨閥(勢道政治)が絡んだ骨肉が争う陰湿な権力闘争の物語である(この辺りは、日本史上の藤原摂関政治そのままであり、違うのは、政治を動かしたのは外祖父ではなく閔妃その人であったと云うことである。それ故に、朝鮮に野望を抱く日本にとっては暗殺の対象であったのだが。)一方では、通商を迫る欧米列強、南下の野望を抱くロシア、自国の安全保障と半島の利権を2つながら得ようとする日本、宗主国清、などの大国の思惑に翻弄される半島国家の悲劇でもある。

 国家が他の国家に兵を入れる論理は何時の時代も変わらない。利権と安全保障であり、振りかざすのは正義である。朝鮮政府内の親日派に工作しクーデターを起こし、東学党による甲午農民戦争を機に朝鮮に出兵し、なし崩し的に日清戦争から閔妃暗殺へと突っ走る。暗殺とは名ばかり、日本の軍人、警察官、自らを壮士・志士と呼ぶ大陸浪人四十数名が堂々と王城に「討入り」、閔妃を殺害する。これはもう暗殺とは呼べない。事件後、一人二百円を支給されて日本に送還され全員が証拠不十分で無罪となる。事件に係わった幾人かは「出世」し、主犯と云うべき時の朝鮮公使は枢密院顧問として政界に重きをなした。立派な「国家の犯罪」である。
 この「アジア選良」意識がないまぜとなったナショナリズムが後に大東亜戦争における国家の犯罪を引き起こし、今だ「教科書問題」「靖国問題」に尾を引いている。

歴史をたどるということがどういう事なのかを知らしめる一冊 →☆☆☆☆★


タグ:朝鮮・韓国
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