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電子書籍あれこれ (4) googleという黒船 [日記(2009)]

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 X’masプレゼントにkindleが売れているようです。Kindle for iPhoneがリリースされ、netを賑わせています。Kindleも日本語のPDFが読めるようになり、青空文庫をPDFにするサービスも始まったようです。『日本語ハック』が必要らしいですが、英辞郎まで入るとか。日本語Kindleもまもなくでしょう。しかし、電子書籍で本命はGoogleではないかと思います。
  『インターネットは本を殺すのか』というダイヤモンドのサイトにある村瀬拓男氏の解説を興味深く読みました。その前編である、『黒船グーグルが日本に迫るデジタル開国』をまとめながら、電子書籍について考えてみます。

1.グーグル和解問題
 事の起こりは2004年の『グーグル・ライブラリプ・ロジェクト』です。グーグルが米図書館と提携して蔵書を片っ端から電子化しようというのです。2005年、米国作家組合と出版社がグーグルを相手に著作権侵害の訴訟をおこしました。そりゃそうでしょう、自分の著作が勝手に電子化され何時公開されるか分からない状態になれば、誰だって文句を付けたくなります。

 ここで『フェアユース』という概念が出て来ます。グーグルは、俺たちのやっているのは『フェアユース』だというのです。

米著作権法では「批評、解説、ニュース報道、教授(教室での利用のための複数のコピー作成行為を含む)、研究、調査等を目的とする」場合のフェアユースを認めている(wikipedia)

 非営利で公共の福祉に資する行為は著作権を侵さない、ということでしょうね。『グーグル和解問題』の裁判では、『フェアユース』の結論は出さずに、2009年10月に和解が成立しています。著者によると和解案は以下の通りです。


 (1) すでにデジタル化されている書籍については、作家などの権利者に1冊あたり60ドルをグーグルが支払う。
 (2) 今後グーグルが運営する「書籍データを利用したサービス」の全収益の63%を権利者に分配する。
 (3) 書籍の権利者は、データベースからの削除や使用方法の一部禁止をグーグルに対して求めることができる。

 グーグルは、和解金として4500万ドル、データベース利用による収益分配組織の設立に3450万ドル、合計約8000万ドルを拠出することになったいうことの様です。

2.『集団訴訟』と『ベルヌ条約』
 この『グーグル和解問題』はペリーの黒船にも例えられますが、日本はどんな影響を受けるのでしょうか。氏によると、『集団訴訟』と『ベルヌ条約』によって、『グーグルの和解』は日本にも影響を及ぼすそうです。
 『集団訴訟』による判決なり和解は、訴訟に加わらなかった同一の利害を有する者にもその効果が及ぶ、というものです。グーグルが払う和解金は、『集団訴訟』に加わらなかった全米の著作者にも支払われるということです。さらに、著作権に関する国際条約『ベルヌ条約』によって、その効果は日本にも及んでいます。
 村上春樹の小説をグーグルがデータベース化していれば、村上春樹は60ドル貰うか、削除の要求をするかの選択に迫られているのです。行動を起こさないと、オプトアウト型式で自動的にOKしたこととなるというものです。

3.グーグルの戦略
 グーグルは和解に8,000万ドルを拠出しました。グーグルは、全米図書館の書籍の電子化を8,000万ドルで買ったわけです。但し利用条件が付きます。『表示使用』と『非表示使用』です。

絶版の本 ⇒表示使用
流通している本 ⇒非表示使用 です。

表示試用の利用制限は、

 (1) 「本」全体の画面での閲覧は可能。
 (2) コピー・ペーストは4頁まで、1回辺りの印刷は20頁まで(印刷には「透かし」が入る)。
 (3) 有料サービスのプレビューは最大全体の2割に限定
 (4) グーグル検索は、検索語に対し検索語を含む3行程度、最大3箇所まで。

などのようです。

非表示使用は、

 図書目録情報の表示のほか、検索語の合致数や合致場所のリストのみを出すことです。これには、重要なキーワードのリストアップ、グーグル内部における研究開発用データなどの使用例があげられます。

とありますが、もうひとつ分かりません。google・booksに行くと、こんなふうになっています

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 グーグルが想定するビジネスモデルは、

 公共アクセスサービス端末を公共図書館や大学、コピーセンターなどに設置し、ページ単位のコピー料金を徴収するモデルが挙げられています。そのほか、プリント・オン・デマンド、教材向けにページ単位で価格設定を行うカスタム出版、PDFファイルのダウンロード販売、データベースの購読権を個人にも販売するモデル、書籍の要約・抜粋の販売

などで、当然広告収入もありますし、何より検索サービスの質が他の検索エンジンと比べて段違いに抜きんでることになります。net利用者はグーグルへなびくこととなります。

 現在日本で出版社により配信されている電子書籍の制作コストは1冊1万円以下ということはありません。仮に低めに見積もって1冊あたりのコストが10ドルだとしても、700万冊以上がデジタル化されるとされていますから、7000万ドルとなります。これだけのコストを単純に合計しただけでも、約2億ドルにもなる。

 2億ドルの投資がグーグルにどれほどの利益をもたらすものか想像も出来ませんが、図書館に行かないと読めない本が簡単に閲覧できるようになれば、世の読書好きにとってこれに勝るものはありません。

●絶版の本が読める。
 ⇒売れない良書が復活する、ということです。
  特に雑誌のバックナンバーが読めるとこれは楽しいことになるのではないかと思います。鉄道ファンの友人が、雑誌のバックナンバーをオークションで集めていますが、こういうのは、採算ベースに乗りませんんから、ボランティアで電子化すると進むと思います。
●図書館に行かなくてもいい。
 ⇒これ大きいです。時間の節約になります。
●電子化されることで検索・引用が簡単になる。
 ⇒キーワードの検索とコピー&ペーストで企画書やレポートの生産性が上がります。キーワードで書籍と書籍に横串を入れることができれば効果は絶大でしょう。
だいたい企画書やレポートなんて、自分の主張や思いつきを他人の理屈でどう補強するか、ですから。
●プレビューで読んでみて興味があったら読む(買う)。
 ⇒『立ち読み』ですね。

 おそらく、本の電子化は文化の裾野を加速的に広げるでしょう。電子化された書籍が文化に及ぼす影響は計り知れないものがあると思われます。

 2010年春には、日本語サービスが1万冊でスタートするようですが、楽しみです。2010年は電子書籍元年です。
現在の状況では、

●グーグルエディション
●Amazon Kinle
●Sony
●Apple

この4つの陣営の競争でしょうね。



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