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映画 髪結いの亭主(1990仏) [日記(2010)]

髪結いの亭主 デジタル・リマスター版 [DVD]

髪結いの亭主 デジタル・リマスター版 [DVD]

  • 出版社/メーカー: エスピーオー
  • メディア: DVD
 ウゥ~ンと唸らざる得ません。エンドクレジットが流れると席を立ってしまう(DVDであれば終了ボタンを押してしまう)映画が多いですが、『髪結いの亭主』はおそらくクレジットが終わっても席を立てない映画でしょうね。

 12歳の少年アントワーヌは、いつも通う理容店の女主人に惚れます。ジュゼッペ・トルナトーレの『マレーナ』で12歳の少年レナートがマレーナに憧れるよりもっと直截で、髪を切る時少年の肩に触れる乳房の量感や女主人の体臭、シャンプーされる快感に酔うわけです。この辺りは、男性であれば誰もが持つ経験ですが、この時アントワーヌは、将来『髪結いの亭主』になることを一生の目標に定めるのです。父親から、将来何になりたいと聞かれ、兄は技術者か何かになりたいと言うのですが、アントワーヌはすかさず『髪結いの亭主!』と答えてひっぱたかれます。笑います。笑いますが、これはある意味真実でしょうねぇ。

 『マレーナ』では、マレーナと少年レナートの成長を描きましたが、『髪結いの亭主』では、中年になってもこの夢?を追い続けるアントワーヌの物語です。
 そしてアントワーヌは『髪結い』の女性マチルドに出会い、見事に『髪結いの亭主』に収まります。映画は、理髪店の狭い空間に詰まったアントワーヌとマチルドの愛をそれこそ舐めるように描きます。定職も持たず、外出もせず、理容店の椅子に座って日がなマチルドだけを見つめるアントワーヌの生活は、あるいは(今の表現を借りれば『草食系男性』の)理想の姿かもしれません。『髪結いの亭主』にはしっかり者の妻というのが定石でしょうが、マチルドもまたアントワーヌに愛されることだけを人生と考える理想の女性。マチルドには過去がありそうなのですが、それらしい描写はまったくありません。勝手に想像しろということでしょう。
 アラブ音楽に合わせてアントワーヌが踊る奇妙なダンス、これは何なんでしょう。酒も煙草も嗜まないアントワーヌの唯一の《趣味》。生活の殆どすべてがマチルドで、唯一アントワーヌが自分自身である部分がこのダンスなのでしょう。これは、マチルドが死んでひとり取り残された理容店で踊る姿に象徴されています。

 押さえた表現ですが、全編これ非常に官能的な映画です。エロスの究極にあるものは、タナトス。まぁフランス映画らしいラストです。『ベティー・ブルー』を連想しますが、もっと洗練されたラブ・ロマンスですね。フランス映画は手強い!

 アンナ・ガリエナの官能、ジャン・ロシュフォールの奇妙なダンスは絶品です。DVDのジャケットには映っていませんので、アンナ・ガリエナのご尊顔を・・・。

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監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、アンナ・ガリエナ


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