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映画 狼は天使の匂い(1973仏米) [日記(2010)]

狼は天使の匂い [DVD] フランス映画、それも古い映画となるとストーリー、セリフ、映像とどれをとっても洒落れてますね。『狼は天使の匂い』、題名からしてフランス映画。原題はLa Course Du Lievre A Travers Les Champs(兎は野をかける)ですが、配給会社の宣伝部もフランス映画というと知恵を絞りますね。

 冒頭からルイス・キャロルの箴言『われわれもまた、眠る時間が来たのを嫌がっている年老いた子どもに過ぎずない』があり、子供が出てきて諍い、大量のビー玉が石の階段を転げ落ちるシーンがあり、もうルネ・クレマンのマジックです。

 舞台はカナダのモントリオール。ロバート・ライアンが出て、舞台はパリではありませんが間違いなくフランス映画です)。何者かに追われるトニー(ジャン=ルイ・トランティニャン)は殺人を目撃したため、犯人達に拉致されます。拉致された先には、チャーリーをリーダーとする不思議な一団が待ち受けています。

 老境に入った元ギャングのチャーリー、チャーリーの手下で芸術家肌のマトン(アルド・レイ)、何かと言うと暴力を振るいたがる元ボクサーのリッツォー(ジャン・ガヴァン、夫を4人も取り替えた料理上手なシュガー(レア・マッサリ、どうもチャーリーの恋人らしい)、ナイフとフォークで食事が出来ないペッパー(ティサ・ファロー、施設から救い出してくれたチャーリーを保護者として慕っている)。年齢も国籍も個性もばらばらな不思議な一団が廃業した宿屋で共同生活を送っています。

 チャーリーを家父長とする家族の様な集団で、その家族の居候にあたるのがトニーでしょう。トニーは殺人の目撃と被害者(どうもチャーリーの一団の裏切り者のようです)から受け取った15,000ドルを隠したためにこの家族に監禁されています。殺されて当然の立場ですが、この15,000ドルが保険となって手錠をかけられ捕虜となっていいるわけです。
 チャーリーとは何者なのか?チャーリーたちが企んでいる『仕事』とは何か?チャーリーとシュガーの関係は?などのトニーが抱く疑問は観客の抱く疑問であり、トニーの観客目線で映画は進行します。

 トニーはチャーリー一家に刺さった棘の様な存在ですが、トニーがおもねることなく自己主張をすることによって、チャーリー達との関係が微妙に変化してゆきます。トニーがチャーリー達にとけ込んでゆく描写は、上質の家族ドラマを見るようです。トニーはチャーリーに認められ、仕事』に参加することとなります。

 チャーリー、ロバート・ライアンです。彼は映画の制作と同年の1973年に亡くなっていますから、『狼は天使の匂い』は彼の遺作ともえなる作品です。第二次世界大戦で死線を渡り歩き(たぶん)、パリで競走馬のオーナーになることを夢見る老ギャングを圧倒的な存在感で演じています。

 ルイス・キャロルの箴言にある『眠る』とは文字通り死ぬことであり、映画では、死ぬ前に一花咲かせようとあがく男たち、ことに主人公チャーリーを指しているのでしょう。と同時に、この映画が遺作となったロバート・ライアンに捧げられた言葉でもあります。お薦めです。

 監督は『禁じられた遊び』『太陽がいっぱい』のルネ・クレマン、音楽は『男と女』『雨の訪問者』のフレンシ・スレイ、出演は『ワイルドバンチ』のロバート・ライアン、『男と女』のジャン=ルイ・トランティニャン、豪華メンバーです。

監督:ルネ・クレマン
音楽:フランシス・レイ
出演:
ロバート・ライアン(Charley)
ジャン=ルイ・トランティニャン(Tony)
レア・マッサリ(Sugar)
アルド・レイ(Mattone)
ティサ・ファロー(Pepper)
ジャン・ガヴァン(Rizzio) 

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