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読書 道尾秀介 向日葵の咲かない夏 [日記(2010)]

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫) 『葉桜の季節に君を思うということ』というミステリがありますが、よく似ています。どこが似ているかというと、作者が仕掛けた物語の枠組みです。小説世界は、作者が仕掛けた架空の話であり、『嘘』です。

 読者は、この嘘を嘘と知りつつ楽しむわけですが、たとえば、本書の謎の中心であるS君は、死んだ後蜘蛛として再生し、主人公のミチオに飼われて自分の自殺の真相と消えた死体を探します。これ自体、ミステリとしては相当に荒唐無稽で、オイオイと思いながら作者の虚構に乗って読み進みます。ところがですね、作者が(たとえば)A君はバッタであるという種明かしをせず思わせぶりな表現で引っ張っておいて最後に、実はバッタなんだと言われると、読んでいる方は白けてしまいます。『葉桜の季節に君を思うということ』ではそのネタが陽性であり、やられた!とつぶやいてしまいますが、本書のネタは極めつけの陰性で、種明かしをされても複雑な思いです。

 いやこれはホラーなんだ、と言ってしまえばそれまでなんでしょうね。相当に荒唐無稽かつ摩訶不思議なミステリ、いやホラーです。好みが分かれる小説です。

タグ:読書
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