映画 トリコロール/白の愛(1994仏ポーランド、スイス) [日記(2011)]
トリコロール三部作を、赤(第三作)→青(第一作)→白(第二作1994)の順番に見ました。それぞれが独立した物語ですから、順不動でいいのかどうか、その辺りも気になります。赤はイレーヌ・ジャコブ、青はジュリエット・ビノシュが奏でる愛の変奏曲でした。白はジュリー・デルピーという女優さんも登場するんですが、メインはむさ苦しい小男ズビグニェフ・ザマホフスキが壊れた愛を修復するために大奮闘します。
スタートからつまずきます。ポーランド人のカロル(ズビグニェフ・ザマホフスキ)は性的不能を理由にフランス人の妻ドミニク(ジュリー・デルピー)から離婚訴訟を起こされます。裁判にも負けてトランクひとつで家から放り出され、金もなく夜露をしのぐ家も無く異郷パリの地下道でホームレス。どうも「赤の愛」「青の愛」とは勝手が違います。そんななか、同郷のミコワイ(ヤヌシュ・ガヨス)と知り合い、トランクの中にもぐり込んでミコワイの手荷物として故郷ポーランドに密出国します。1994年当時のヨーロッパは、こういうことが絵になったんですね。
ポーランドに帰ったカロルは、ミコワイの自殺幇助に手を貸すこととなります。カルロは空砲でミコワイを撃ち、ミコワイは自殺願望から解き放たれます。唐突で強引ですが、このミコワイの自殺未遂事件が「白の愛」の重要な伏線です。
その後、カロルはミコワイから借りた資金で事業を始め、またたく間にひと財産作るのですからエッーです。キェシロフスキ(監督)さん、ちょっとやりすぎではと言いたくなりますが、この自殺未遂と事業の成功は「白の愛」を構築するための道具立てです。
ここから、ネタばれです。
ドミニクを忘れられないカロルは、ドミニクの愛を取り戻すために大作戦を敢行します。カロルは全財産をドミニクに残し、自殺します。主人公が自殺してどうするんだ!・・・いえ、偽装自殺です。死体まで調達し、葬儀まで行います。つまりですね、ミコワイは死の一歩手前で引き返したことで新しい生を手に入れたわけで、このミコワイに倣って一度自分を殺すことによって新しい人生を手に入れようとしたわけです。ドミニクとの関係修復を図ろうとしたわけです。まぜかえすつもりはないのですが、離婚の原因である性的不能はどうなったんですかねぇ。おまけに死んでしまっては、関係修復も無いと思うんですが。
さらにもうひとつのたくらみが・・・、そこまでバラスとなんですからこの辺りで止めましょう。ラストで、カロルの兄が弁護士費用が高くつくと言ってます、またドミニクが手話?でカロルに何か伝え、カロルは涙を流します。思わせぶりなシーンですが、描かれない結末でしょうね。
コメディ仕立て?の「白の愛」は、性的不能が愛の障害となるという、まことに現代的な愛の不毛とその克服の物語ではないかと思います。滑稽で一途な物語です。トリコロールの3部作を振り返ると、
青の愛:女性を主人公とした、壊れた愛の再構築
白の愛:男性を主人公とした、壊れた愛の再構築
赤の愛:両性を主人公とした、愛の輪廻または輪廻する愛
たぶん、自由・平等・博愛とは無関係だと思います。今度、三本を一気鑑賞してみます(笑。
それと、ここにある「復讐」云々というのは疑問です。
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
出演:ズビグニェフ・ザマホフスキ ジュリー・デルピー ヤヌシュ・ガヨス
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