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トム・ロブ・スミス エージェント6 (上) [日記(2012)]

エージェント6(シックス)〈上〉 (新潮文庫)  スターリン体制下のソヴィエトで起こる連続殺人事件とその捜査を描いた「チャイルド44」、スターリン批判というパラダイムの転換期に生きる人間の姿をダイナミックに描いた「グラーグ57」、ソヴィエト国家保安省捜査官レオ・シリーズの完結編です。改めて思うのですが、ソヴィエトでは生きてゆくこと自体が「冒険」かもしれません。このシリーズは捜査官レオが出会う事件が当然物語の中心ですが、レオとライーサを核とした家族の物語でもあり、今回もライーサと養女ゾーヤ、エレナ姉妹が前半の主人公です。

 たしか「チャイルド44」でライーサがレオの求婚を受け入れたのは、レオが気に入ったわけではなく、保安省の捜査官に対する恐怖からだったことが本書では明かされています。「エージェント6」は、「チャイルド44」以前のレオとライーサの出会いで物語は幕を開けます。

 今度の舞台は1965年のNYです。ライーサの提案によって、ソヴィエトの少年少女の合唱隊をNYに派遣し、国連ビルで米国の子ども達と交流する企画がスタートします。冷戦の最中、米ソはこれ幸いと飛びつき、ライーサ、ゾーイ、エレナ母娘はNYの地を踏むこととなります。事件はNYで起こります。
 「エージェント6」にはもうひとり重要な人物が登場します。共産主義者で、かつて米国で一世を風靡した黒人歌手ジェシー・オースティン。冒頭でも登場して、レオとライーサのキューピッドみたいなことをやってます。このオースティンと少年少女合唱隊の裏で米ソの諜報員が暗躍し、何とライーサが銃で撃たれて死にます。
 オースティンはソ連を訪れていますからライーサと面識があり、これを利用して三角関係のもつれを捏造し、ライーサがオースティンを撃ち、オースティンの妻がライーサを撃ったという事件がでっち上げられます。

 このあり得ない顛末の真相を探るべく、レオはソヴィエト・フィンランド国境を越えNYに向かおうとします。ここで上巻は幕。

 訳文がいいです。翻訳ということを全く感じさせない日本語です。
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