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映画  雨月物語(1953日) [日記(2012)]

雨月物語 [DVD]
 冒頭のクレジットにも出てきますが、「雨月物語」の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」を下敷きとした映画です。陶工・源十郎と妻宮木の物語が「浅茅が宿」にあたり、源十郎と若狭の物語が「蛇性の婬」です。源十郎が関わるこのふたつの怪異譚に平行して、現実的な藤兵衛と阿浜のサブストーリーを組み込んだのが、映画「雨月物語」の大まかな構成です。
 「雨月物語」ですから、当然に怪談です。ヴェネツィア国際映画祭で賞を獲ったり海外で評価が高いのは、この日本的な怪談の不思議さ、美しさによるものと思われます。ラフカディオ・ハーンが惹かれた「怪談 Kwaidan」の世界でしょう。

源十郎(森雅之)の物語
 前半の信長に滅ぼされた朽木一族の姫・若狭(京マチ子)の死霊に取り憑かれる話と、後半の故郷に残した妻・宮木(田中絹代)と再会を果たすが、宮木は既にこの世の人ではなく、源十郎が再会したのは死霊であったという話が、映画の中心です。前者は、侍女・右近(毛利菊枝)に語らせていますが、若くして死んだ若狭に束の間の恋と女らしい幸せをもたらしたいと、あの世からやって来ます。若狭の死霊に取り憑かれた源十郎は、旅の僧によって身体に経文を書いて貰いこの難を逃れます。どっかで聞いたような... 「耳なし芳一」ですねぇ。一方宮木は、故郷に戻った源十郎のために、ひとり息子を引き合わせ、一夜の家族の団欒をもたらすため、これもあの世から戻ってくるわけです。若狭にしろ宮木にしろ、女のはかなさを描くことで映画の芯は成り立っています。このふたつで十分な筈ですが、ここで藤兵衛の物語が挟み込まれます。

藤兵衛(小沢栄)の物語
 宮木と藤兵衛の妻・阿浜(水戸光子)が姉妹ですから、藤兵衛と源十郎は義理の兄弟にあたります。
 源十郎の物語が幻想的な怪異譚であったことに比べると、藤兵衛の物語の物語はいたって現実的な物語です。農民の藤兵衛は、侍になって乱世での出世を夢みています。雑兵となった藤兵衛は、偶然敵方の武将の自決の現場に出くわし、難なくその首を得るという幸運に出会います。これによって藤兵衛は、家来を持つ将校に出世します。念願かなった藤兵衛は、晴れ姿を妻の阿浜に見せようと故郷に向かいます。この凱旋の途中に立ち寄った女郎屋で、藤兵衛は女郎となった阿浜と再会します。侍になるために出奔した藤兵衛を追っている間に、阿浜は兵士から乱暴を受け女郎に身を堕としたいうわけです。阿浜との再会によって夢から覚めた藤兵衛は、武士を棄て阿浜を連れて故郷に帰ります。これも何処かで聞いた話です。

 映画「雨月物語」は、藤兵衛と 阿浜の現世の幾分苦いロマンスと源十郎のふたつの怪異なロマンスを対置し、現世と異界の交差する世界を描いています。で、お薦めかという、1953年のモノクロ映画を現在見てもそんなに面白くはありませんが、京マチ子の死霊は一見の価値があるかも知れません。
 
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 死霊・若狭                      死霊・宮木
 
監督:溝口健二
出演:森雅之 小沢栄(栄一郎) 京マチ子 田中絹代 水戸光子

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サンフランシスコ人

10/22 サンフランシスコ近代美術館で「雨月物語」を上映...

https://www.sfmoma.org/event/ugetsu/
by サンフランシスコ人 (2016-10-09 03:50) 

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