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BSシネマ 風とライオン(1975米) [日記(2013)]

風とライオン [DVD]
 モロッコの族長ライズリが、モロッコに政治的緊張を生み出すためにアメリカ人を誘拐します。この事件に、大西洋を隔てたワシントンで時の大統領セオドア・ルーズヴェルトが応酬するという話しです。
 モロッコが主な舞台ですから、族長ライズリ(ショーン・コネリー)と誘拐されるイーデン(キャンディス・バーゲン)が主役なのでしょうが、ひょっとしたらルーズヴェルト(ブライアン・キース)こそが主役なのではないかと云う、不思議な映画です。

 物語は1904年。
 アフリカはヨーロッパ列強の蚕食に晒され、モロッコも西英仏独が自国の伸張にしのぎを削り、アフリカに足がかりを持たない米露が虎視眈々と機会を伺うという政治的状況です。ライズリは、アメリカ人親子を誘拐することでアメリカをモロッコに引きずり込み、列強同士を噛みあわせてモロッコの政治的自立を目指したようです。
 一方ルーズヴェルトは大統領再選を控えて選挙運動の真っ最中。そうした中でアメリカ婦人とふたりの子供の誘拐事件が起き、ルーズベルトはこれ幸いと事件を選挙に取り込みます。強いアメリカ強い大統領を誇示し選挙を有利に進めようということです。
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 ルーズベルトは、モロッコに大西洋艦隊を派遣し海兵隊によってイーデン母子の救出を図ります。海兵隊はタンジールの宮殿を強襲してサルタンを捕らえ、ライズリの要求を飲ませ人質を開放させます。このサルタン宮殿の襲撃は、他人の家に土足で踏み込むようで、見ていて抵抗があります。海兵隊が誘拐犯のライズリを強襲するのであれば理解出来ますが、外交に失敗したからといってれっきとした国家の元首を武力で拘束するんですからね。これは、アメリカの伝統的な対外政策であり戦略であり、アメリカ人が見れば何の不思議もないのでしょう。
 
 熊撃ちに出かけたルーズベルトは、記者の質問答えてアメリカ人についてこう言います
 
グリズリ(熊)は米国人気質を象徴している 強く賢く荒々しい
時には向こう見ずだ 勇敢なのは言うまでもない
一番の特徴は 孤独だよ熊は生涯孤独だ
何ものにも支配されず屈せず いつも孤独だ
彼に味方は無く敵ばかり  世界から愛されない
敬意と怖れを抱かれても決して愛されはしない

 誘拐事件に対処するルーズベルトを扱ったこの映画は、アメリカの国威発揚映画のような気さえします。ラストシーンで、敵に立ち向かう後ろ足で立ったグリズリとルーズベルトのツーショットはこの映画の性格をよく表わしています。
 
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 このルーズベルトのエピソードに比べると、ライズリとイーデンは取るに足りません。グリズリがルーズベルトの装飾であるように、ライズリもまた彼の引き立て役に過ぎません。ライズリは勇敢で誇り高い族長として描かれますが、ライズリが誇り高い男であればあるほど、それに対峙するルーズベルトが輝くという仕組みです。イーデンもまたそうです。イーデンは誘拐されてストックホルム症候群に陥りふたりの子供とともにライズリのファンとなり、ドイツ軍に捕まったライズリを助けるとという「快挙」にまで出ます。
 この映画は、《ルーズベルト ←ライズリ ←イーデン》と云う構図で成り立ち、ひとりルーズベルトが輝いている(輝かせる)映画です。で、お薦めかというとチョット...。

 監督は誰だ ⇒『ビッグ・ウェンズデー』のジョン・ミリアス。『ビッグ・ウェンズデー』と『風とライオン』ではかなり隔たりがありますね。ショーン・コネリーは貫禄で絵になっています。この手の配役で一番絵になっていたのが『アラビアのロレンス』のアンソニー・クインですね。ブライアン・キースは西部劇しか見たこと無いのですが、なかなか熱演。ジョン・ヒューストンも出てますが、俳優もやっていたんですね

監督:ジョン・ミリアス
出演:ショーン・コネリー ブライアン・キース キャンディス・バーゲン ジョン・ヒューストン

タグ:BSシネマ
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