BSシネマ マルタの鷹(1941米) [日記(2013)]
「ハードボイルドの傑作」だそうです。「傑作」と云う言葉には弱いですね。ちょうどBSで放映されていたので見てみました。1941年の公開、モノクローム、主演があの“ボギー”ことハンフリー・ボガード、さすがに「古い」です。
ストーリーはどうと云うことはりません。私立探偵サム・スペード(ハンフリー・ボガート)のもとにNYからやってきた婦人ブリジッド・(メアリー・アスター)が現れ、駆け落ちした妹探しを依頼します。駆け落ち相手と接触しようとしたサムの相棒が射殺され、事件は意外な方向に発展します。サムは、巨額の価値を秘める「マルタの鷹」争奪戦に巻き込まれることとまります。
サムの相棒を殺した犯人、オショーネシーの正体が明らかになり、「マルタの鷹」を追う胡乱な人物が登場しますが、話はそれだけです。昨今のプロットにプロットを重ねた複雑なサスペンスに比べると、これだけ?どこが傑作?と云うことになります。どうも、この映画の楽しみ方は別にあるようです。
『マルタの鷹』を、現在の基準で「面白くない」と言っても仕方がありません。ハンフリー・ボガート演じるサム・スペードという人物の位置づけ、言動を見てゆくと意外と面白いと思います。面白いというより、アメリカのミステリが生み出した「ハードボイルド」と云うジャンルが分かります。アメリカの男性のひとつの理想形が想像出来ます(アメリカに限りませんが)。
先日見た『風とライオン』で、米国人気質をグリズリ(熊)に例えたセオドア・ルーズベルトのセリフです。
グリズリ(熊)は米国人気質を象徴している
強く賢く荒々しい
時には向こう見ずだ 勇敢なのは言うまでもない
一番の特徴は 孤独だよ熊は生涯孤独だ
何ものにも支配されず屈せず いつも孤独だ
『マルタの鷹』で私立探偵サム・スペードに与えられた性格そのものです。この強く賢く荒々しく向こう見ずで勇敢で孤独を、ひとつづつシーンシーンでハンフリー・ボガートに演じさせています。サム・スペードをアメリカ男性の「ひとつの」理想として描いたということなんでしょう。サムはブリジッド・オショーネシーに惚れているのですが、オネーショーが相棒殺しの犯人であることを知ると彼女を警察に引き渡します。ブリジッドもまたサムに愛を告白しますが、サムはこれを演技だと撥ね付け、惚れた女性を救いたいと云う想いを断ち切ります。サムは、探偵として犯罪を見逃すことことを潔しせず、同業者のために恋よりも探偵を殺した犯人が捕まることを優先させたわけです。言ってみれば痩せ我慢です。ラストシーンで、ハンフリー・ボガードは、何ものにも支配されず屈せず いつも孤独であることを体現します。とすれば、孤独とは痩せ我慢の言い換えなんでしょうか。
痩せ我慢1(カサブランカ) 痩せ我慢2(マルタの鷹)
ジョン・ヒューストンの監督デビュー作です。『アフリカの女王』もハンフリー・ボガートとのコンビです。ハンフリー・ボガートと言云うと何と言っても『カサブランカ』です。この映画でも、かつての恋人を夫と共に亡命させるという痩せ我慢を演じています。
でお薦めかと云うと、1941年のハードボイルドの傑作、古典を見てもたぶん面白く無いと思います。
監督:ジョン・ヒューストン
出演:ハンフリー・ボガート メアリー・アスター
タグ:BSシネマ
私は見ていませんけど、この手の映画は、たぶん健さんの映画と同じでボガートを見にいく映画なんだと思います。
by ktm (2013-02-25 18:52)
そう、おっしゃる通りです!、健さんです。
by べっちゃん (2013-02-25 20:14)