SSブログ

映画 最強のふたり(2011仏) [日記(2013)]

最強のふたりコレクターズ・エディション(2枚組)(初回限定仕様) [DVD]
 原題はIntouchables(英語のUntouchables)。邦題の『最強のふたり』とはなかなか言い得て妙です。
 ポスターを見ただけで大体のところは察しがつきます。車椅子の白人とそれを押す黒人。このふたりが最強のコンビなんでしょう。白人と黒人ですから、人種を超えた友情というのも想像がつきます。アメリカ映画では無く、フランス映画でしたね。フランスはアフリカに多くの植民地をもっていましたから、黒人がいても何の不思議もありません。と云うことで見てみると、半分は当たりで半分はハズレ。
 
 富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)はパラグライダーの事故で首から下が麻痺、わずかに動く顎を使って車椅子を運転する生活です。このフィリップの介護人募集に、黒人の青年ドリス(オマール・シー)が応募してきます。何人もの応募者があり、経験もあり資格を持つ応募者の中で、ドリスは経験なし資格なし。最初から働く気は無く、失業手当目当ての職探しの実績作りで応募したわけです。普通の介護人に飽き飽きしていたフィリップはドリスを雇います。
 
 ドリスは複雑な家庭事情をかかえ、謂わば社会階層の底辺で生きている青年です。原題のIntouchables(英語の)ですが、普通であれば知り合う(触れ合う)ことのないフィリップとドリスの関係を言っているのではないかと思います。複数形ですからUntouchableなふたり、という意味でしょう。介護人となってドリスはフィリップ邸に一室を与えられます。ドリスの実家の狭い部屋とその豪華な部屋の落差こそがUntouchableの象徴です。風呂にはいるシーンがそれを象徴しています。実家では、兄弟たちに邪魔されながら狭い風呂に身をかがめて入りますが、フィリップ邸の風呂は広くて豪華。ドリスが風呂に入って無邪気に遊ぶシーンは繰り返し出てきます。
 
 描かれているのは、障害者の富豪と前科一犯の黒人青年の友情です。知り合ってわずかな時間で友情が育つわけはないのですが、ドリスは障害者としてではなくひとりの人間としてフィリップに接し、フィリップもそれに答えることでふたりの絆は深まります。ドリスの優しさとかそういうものではなく、どちらかと云うと彼の育ちでしょう。年長者に対する礼儀もわきまえず、雇用主に対する遠慮もありません。病人のフィリップにマリファナか何かを吸わせたり、フィリップを自分のフィールドまで引っ張って来て、マァ気楽にやろうと言うドリスを、フィリップは気に入るわけです。
 首から下が麻痺したフィリップにとって、「性」の話はタブーかと思うのですが、ドリスはこれもサラリと言ってのけ、「耳が朝立ちする」と言う話をフィリップから引き出し、「だんだん最強のふたり」となります。

 フィリップは結構鼻持ちならない“スノッブ”で、手紙には文学書か何かから気の利いた文句を引用して悦に入り、自分の誕生日に室内楽団を呼んで演奏させます。この演奏会で、クラシックもいいけどコッチもいいよと、ドリスがラップか何かを歌って踊り出します。ドリスに誘われて使用人が踊り出し、楽団員も伴奏を始めます。フィリップ⇒クラシック音楽=高尚という構図が崩れて、フィリップもドリスもどちらも“ボチボチ”(似たようなもの)という世界が現れます。
 それにしても、人と人の関係と云うか絆は不思議なものです。いい友だちを持つと人生は楽しいということでしょう。実話だそうです。

 障害を扱った映画に、左まぶたの動きでコミュニケーションを取る『潜水服は蝶の夢を見る』というすごい映画がありましたが、それに比べると、『最強のふたり』は分り易いです。『海を飛ぶ夢』という、全身麻痺の男性の尊厳死を扱った映画もありました。ヨーロッパ映画はひと味違います。
 これはお薦めです。 

監督:エリック・トレダノ オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ オマール・シー

nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0