BSシネマ 忍者秘帖 梟の城（1963日）

　原作・司馬遼太郎、監督・工藤栄一、脚本・池田一朗（隆 慶一郎）、主演・大友柳太朗とくれば見ないわけにはいきません。工藤栄一、大友柳太朗のコンビには名作『十一人の侍』がありますから、これは期待できそうです。

　ストーリーは、親兄弟を戦乱で失った伊賀忍者・葛籠重蔵（大友柳太朗）が、秀吉暗殺を企て、これを軸に甲賀忍者、ドロップアウトした伊賀忍者が入り乱れる「忍者」ものです。秀吉は天寿を全うしたわけですから、重蔵の暗殺は失敗。この失敗をどう描くかというのも重要なプロットですが、秀吉の寝所に忍び込んだものの、その老醜振りに哀れをもよおし、けっきょく暗殺を止めてしまいます。長年にわたって仇と狙っていた秀吉は、しなびた只の老人に過ぎなかったことが分かって、恨みも消えてしまったというわけです。

　この重蔵の秀吉暗殺を後ろでバックアップするのが堺の豪商今井宗久。今井宗久は、秀吉が死んで再び戦乱の時代が来れば武器商人として大儲けができると考えるわけです。宗久は養女の「くノ一」小萩（高千穂ひづる）に重蔵を監視させ、小萩と重蔵はいつしか愛し合うというサブストーリーがくっつきます。

　京都所司代が甲賀忍者、重蔵のかつての同僚で伊賀忍者の五平（大木実）を使って秀吉暗殺を阻止し。戦いは、伊賀VS.甲賀+五平と重層的になるのですが、映画の方は至って平板。

　京都所司代の奉行に、『十三人の刺客』『十一人の侍』で活躍のバカ殿（リメイクでは稲垣吾郎）菅貫太郎が扮します。この人の悪役振りは、異彩を放ちます。

　で面白いかというと、全くのハズレ。どうも司馬遼太郎の原作が足かせとなって、映画として自由な発想が無くなってしまったようです。忍者映画としては、池上金男（池宮彰一郎）が脚本に加わっている『十七人の忍者』の方が格段に面白いです。

　今時この映画をDVDで見ようという方はいないでしょうが、お薦めの一作というわけにはいきません。

監督：工藤栄一

原作：司馬遼太郎

脚本：池田一朗（隆 慶一郎）

出演：大友柳太朗　大木実　高千穂ひづる

タグ：BSシネマ