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BSシネマ 映画 2001年宇宙の旅(1968米) [日記(2013)]

2001年宇宙の旅 [DVD]
 原題、2001: A Space Odyssey。
 「SF映画の金字塔」と言われる、謎だらけで象徴にみちた映画の感想を書くのも、今更ながらで気が引けます。NHKで放映されていたので、久々に見ました。

 映画は、

・人類の夜明け  ⇒類人猿の道具の獲得と殺人、及び月基地でのモノリスの発見(便宜上第1部とします)
・木星使節  ⇒モノリス探求のための木星ミッション、及びHAL9000の叛乱(第2部)
・木星 そして無限の宇宙の彼方へ  ⇒モノリスとの遭遇、及び(所謂)スターチャイルドの登場(第3部)

の三部構成です。この三部をつなぐのが謎の石柱モノリス。

【モノリス】
 第1部では、類人猿が道具を獲得し、この道具の獲得にモノリスが関わっていることが暗示されます。人類が道具を獲得し、その道具を武器として仲間を殺すことは、モノリスの意思(というものがあっての話ですが)外です。いわば道具(文明)を手に入れたことから生じる負の部分です。人類は、道具を獲得して進化の道を歩み始めるのですが、同時に殺人、大量殺戮という悪魔とともに進化の道を歩み始めたということです。人類進化のスイッチを入れるものがモノリスです。モノリスは、地球外生命が作った高度な機械だという解釈や神だという解釈もありますが、自然の摂理の「摂理」ということにしておきます。それを映像化するためにモノリスが生まれたのでしょう。

 人類は宇宙時代を迎え、月でモノリスを発見します。モノリスが木星に向けて電波を発射していることが発見されたことで、人類はモノリスの謎の解明のためにディスカバリー号を木星に派遣します。

【HAL9000】
 この人工知能HAL9000が厄介です。ディスカバリー号の乗組員は、宇宙船を木星まで運ぶ2人のクルー、ボーマンとプール、そして冷凍睡眠に入っている3名の調査員の合計5名。そして宇宙船を管理するHAL9000。

 HAL9000が殺人を犯します。HALは、宇宙船外部にある通信モジュールの不良を発見してプールに回収させますが、モジュールは正常。ボーマンとプールはHALの異常を疑い、万一の場合はHALの電源を切ることで意見が一致します。この会話を読唇術でHALに読まれてしまったことで、歯車が狂い出します。モジュールを戻しに行ったプールを、HALは事故を装って宇宙に投げ出して殺し、プールを回収しに行ったボーマンを宇宙船から締め出すという暴挙に出ます。さらに、冷凍睡眠のスイッチを切り調査の3名を殺します。 
 ボーマンは、非常口から危険を犯して宇宙船に戻り、HALの電源を切ります。

 このディスカバリー号とHALを描いた第2分が、映画の中核です。HALの殺人の動機は明らかです。通信モジュールの件でHALの異常を疑ったボーマンとプールが、スイッチを切る(殺す)と密談したことを知ったHALは、正当防衛のために人間を殺そうとしたのです。冷凍睡眠の3人が目覚めHALの殺人を知れば当然スイッチは来られます。従って、ボーマンとプールを殺す以上は、3名も殺す必要があります。

 第2部は、この映画の中で一番長く、説明的な第1部、イメージを駆使した結論の第3部に比べると、ストーリーらしいストーリーを持った中核です。
 これを、第1部の関連で見ると、HALとは、類人猿が獲得した骨=道具に相当します。類人猿は道具を使って仲間を殺しますから、第2部描かれたのは、道具による殺人を超えた、道具自身による殺人です。HALがボーマンたちに言います、「コンピューターは決して誤りを犯さない、誤りを犯すのは人間だ」と。HALの殺人は、ボーマンたちが、誤操作(HALのスイッチを切るという)により自ら招いた結果です。

 キューブリックは、1964年に『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』を発表し、人類が発明した「道具」=核ミサイルがまた人類を滅ぼすというカリカチュアを描いています。従って、1968年のこの映画も同じ文脈で解釈することが可能です。ボーマンはHALのスイッチを切り、生き残って木星に到達します。

【所謂スターチャイルド】
 第2部では進化のスイッチを入れなかったモノリスが、第3部ではスイッチを入れます。第3部はイメージと暗喩の洪水で、想像力の乏しい人間(私)には理解不能ですが、進化のスイッチが入ったのだろうということだけは分かります。行き着いた先で、ボーマンは、老いた自分の死と誕生を見、新しい人類として宇宙空間に誕生します。人類進化の新しいステージと如何なるものか、残念ながらキューブリックは何も描いてはいません。

 スタンリー・キューブリックが描いたのは、人類の「進化」ということではないかと思います。別の表現をすれば、人類は何処から来て何処に行くのか。そして進化というものにつきまとう陥穽(類人猿の骨やHALによる殺人)を描いたのかなと思います。

 で、お薦めかというと、映画好きなら一度は見ておいて損はない映画だと思います。『プロメテウス』も詰まるところ、『2001年宇宙の旅』のヴァリエーションに過ぎないと思うからです。

監督・制作:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック アーサー・C・クラーク
出演:キア・デュリア

タグ:BSシネマ
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