映画 フォー・ウェディング（1994英） BSシネマ

　原題はFour Weddings and a Funeral、4つの結婚式と1つの葬儀。邦題だと結婚式だけですが、この葬儀というのに意味があります。BSでやっていたのでなんとなく見たのですが...。

　ヒュー・グラントは、ラブコメでダメ男をやらせれば右に出る人はいないのではないかと思います。このヒュー・グラント演じるダメ男が紆余曲折の末奔放なアメリカ娘と結ばれる顛末を、この男の廻りで起こる4つの結婚式と1つの葬式をからめて描いたコメディです。

　イギリスでは、結婚式で結婚相手を見つけるというのが慣習としてなりたっているようです。最初の結婚式の顛末は？ですが、残る3つの結婚は、いずれも結婚式がきっかけで結婚に至っています。独身主義というわけでもないのですが、友人の結婚式にばかり参列している間に、結婚というものに感動も新鮮さも感じなくなり、自身の結婚に踏み切れない男、チャールズ（ヒュー・グラント）の話です。

　チャールズは、友人の結婚式でアメリカ娘キャリー（アンディ・マクダウェル）に一目惚れ。再会を果たし、あれよあれよという間に男女の関係となります。なりますがキャリーは結婚の意志はなくアメリカに帰ってしまいます。キャリーは、男女関係にはしたたかというか奔放というか、今まで関係のあった男性は33人でチャールズは32人目とヌケヌケと曰います。男性遍歴は飽きたとばかり、キャリーは年配の婚約者を連れてチャールズの前に現れ、結婚衣装を選ぶ手伝いまでさせられるヒュー・グラントのダメ男振りは、相変わらず冴えてます。

　キャリーの結婚式で、チャールズは友人のフィオナに、アンタはどうして結婚しないのだと問い、片思いの人がいるから、誰？、目の前に、とか言わせます。フィオナは、なんとあの『イングリッシュ・ペイシェント』のクリスティン・スコット・トーマス！。クリスティン・スコット・トーマスが出ていることは知っていたのですが、この一言を言わせるためだったわけで、何という贅沢な配役。キャリー役のアンディ・マクダウェルとは「格」が違うんですがねぇ。

　この結婚式の最中に招待客のギャレス（サイモン・キャロウ）が心臓麻痺か何かで斃れて亡くなります。Four Weddings and a Funeralの‘ a Funeral’です。ギャレスとはどういう関係か一切説明されませんが（その必要も無いですが）、その恋人のマシュー（ジョン・ハナー）とともに、チャールズが参加する結婚式には必ず登場する同性愛者（ゲイ）です。マシューは、ギャレスの葬儀で「時計を止めよ　電話を切れ...」と恋人の死を悼むために、オーデンの詩を朗読します（オーデンもゲイ）。

　4つの結婚式の物語と平行して同性愛の葬儀が描かれることは、結婚式のカラ騒ぎは葬儀によって終わるという皮肉であり、男女の愛も同性愛も何も変わらないのだ、時によってはもっと深いのだというメッセージなのでしょう。

　年貢を収めたわけか、チャールズは「アヒル顔」の元彼女と結婚することになります。ここからどんでん返し。チャールズの結婚式に夫と別れたキャリーが現れ、チャールズの決心はぐらつき始めます。なんぼなんでも、結婚式に愛する女性が現れたから、この結婚は無かったことにしよう、というのはないと思うのですが、そこは映画ですから無かったことになるんです。

　最後にチャールズの自宅にキャリーが現れ、結婚式をぶち壊したことを謝るのですが、チャールズはキャリーに「求婚」します。これがオチなのですが、「結婚しないでおこう、でも一緒に暮らそう（だったと思います）」キャリーの答えは「I do」。‘I do’とは、結婚式で神父が結婚の誓をさせて、新郎新婦が答える‘I do’です。

　結婚だけが愛の最終的な姿なのか、そうでは無いだろう、ということなのでしょう。最後のフラッシュで、「アヒル顔」の元彼女もチャールズ廻りの男女も幸せな結婚をし、結婚をしなかったチャールズとキャリーにも可愛い子どもが生まれたようです。フィオナはどうなったか？これだけは謎です（笑。

　でお薦めかというと、真面目に見ているとヒュー・グラントとアンディ・マクダウェルが鼻につきます。これはコメディだと思って見ると、気が利いた映画です。ローワン・アトキンソンが結婚式の司祭役で笑いを取りますが、英語圏の観客なら笑えるんでしょうね。

監督：マイク・ニューウェル

出演：ヒュー・グラント　アンディ・マクダウェル　クリスティン・スコット・トーマス

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