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映画 ミネソタ大強盗団(1972米) BSシネマ [日記(2014)]

ミネソタ大強盗団 [DVD]
 原題はTHE GREAT NORTHFIELD MINNESOTA RAID。伝説のジェッシー・ジェームズ強盗団(ジェイムズ=ヤンガー・ギャング団)です。ジェッシー・ジェームズは、「OKコラルの決闘」「リンカーン郡戦争」とともに、西部劇「忠臣蔵」みたいなものだと思います(笑。強盗が何故コレほどもてはやされるのか?『ロング・ラライダーズ』を見て分かったのですが、彼等は敗れた南軍のゲリラとしてミズーリ州の民衆の支持を受けて強盗を働いた「義賊」なのです。『ミネソタ大強盗団』では冒頭からそのことが見て取れます。彼等は、南部の民衆を搾取する北部金融資本の銀行を襲い、列車で運ぶ金を奪います。ミズーリ州の議会に、ジェッシー・ジェームズ一味に特赦を与えようという議題が提出されるほどです(ホンマ?)。
 ジェッシー(ロバート・デュヴァル)が、80ドルが払えずに立ち退きを迫られる婦人に金を与える伝説もしっかり描かれます。
 
 『ミネソタ大強盗団』ジェッシー・ジェームズ強盗団のもう一人のリーダー、コール・ヤンガー(クリフ・ロバートソン)がミネソタ州ノースフィールドの銀行を襲って失敗して捕まる話です。アメリカン・ニューシネマの例にもれず、南軍ゲリラの成れの果て達が破滅に向かって突っ走るその刹那的光芒と虚無感がいいのです。

 『明日に向かって撃て』でブッチが自転車に乗るのどかなショットがありますが、『ミネソタ大強盗団』でこれに相当するのが野球です。ノースフィールドの原野で、コールは、これから襲う銀行の頭取と草野球とシャレコミます。野球というよりソフトボールです。バッターは一塁に走って一塁手に体当たりしたり、判定を巡ってつかみ合いの喧嘩が起こったり、初期のアメリカ野球はさもありなんと云う喧騒とドタバタです。スコアは46対47でノースフィールドが勝つという荒っぽい野球です。別にストーリーに絡んでくるわけではありませんが、こういうシーンがいいですね。
 もうひとつ、ジェッシーと合流したコールは、一味ともども娼館に繰り出し、馬鹿騒ぎをします。この娼館で若い娼婦が歌う憂愁を帯びた歌が、ジェイムズ=ヤンガー・ギャング団の行く末を暗示しているようで、なんとも言えません。
 野球とともに、コールがノースフィールドで出会う蒸気自動車、蒸気仕掛けのオルガンなどが登場し、時代が変わりつつあることを写しだしています。つまり、ジェッシーもコールもこの新しい時代に乗り遅れた強盗団という暗示でしょう。

 野球場に金貨を積んだ馬車が現れ、頭取を探しだして銀行の金庫に大金を預け入れたいと申し出ます。これは破産寸前の頭取が仕組んだ芝居で、野球に応援に駆けつけた市民に対するデモンストレーションというわけです。銀行が安全と分かった市民は、我も我もとタンス預金を銀行に預け、溜まったところをジェイムズ=ヤンガー・ギャング団が襲います。象徴的なことは、見張りが撃ち殺した人間が蒸気オルガンの鍵盤に倒れこみ、この騒音で市民が駆けつけ、強盗が露見し、時限金庫に阻まれて強盗は失敗します。コールは数発の銃弾を受けて捕まり、ジェッシーは逃げてジェイムズ=ヤンガー・ギャング団は潰えます。

 でどうなんだと言われても答えようが無いほど、ドラマに乏しい映画です。が、19世紀末の時代に乗り遅れた虚しい青春の光と影を描いたという意味では、アメリカン・ニューシネマの傑作の1本です(ややオーバ)。
 驚いたことに、監督が『存在の耐えられない軽さ』のフィリップ・カウフマンです。amazonでDVDが7500円。ほとんど流通していないようです。こういった隠れた映画を何気なく放映してくれるのが、NHKのいいとことです。

監督、脚本: フィリップ・カウフマン
出演:クリフ・ロバートソン ロバート・デュヴァル ルーク・アスキュー

タグ:BSシネマ
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