SSブログ

映画 赤線地帯(1954大映) [日記(2015)]

赤線地帯 [DVD]
 売春防止法施行前夜の、吉原の売春宿「夢の里」を舞台に、そこで働く娼婦たちを描いたものです。毒々しいネオンと路地の客引きの映像からイメージからすると、遊郭というよりまさに「赤線地帯」です。

 5人の娼婦と、娼館の旦那と女将が織りなす、主役不在の従って明確な主題の無い風俗映画です。(変な表現ですが)主役のいない主題の無いことこそこの映画の主題で、溝口健二は、それぞれに事情を抱えて生きる5人の娼婦で世の女性の類型を描いたと云うことでしょうか。

 満州で夫を亡くし、17、8歳の息子を夫の実家に預けて仕送りをしているゆめ子(三益愛子)、結核の夫と赤ん坊を抱えるハナエ(木暮実千代)、故郷の恋人?との結婚を夢見るより江(町田博子)、客に貢がせ同僚に高利貸しをして蓄財に励むやすみ(若尾文子)。この4人に、神戸から流れてきた刹那主義のミッキー(京マチ子)が加わります。
 ゆめ子は、娼婦であることを息子に非難され、絶縁を言い渡されて発狂。ハナエの夫は、将来に絶望して自殺未遂。より江は同僚娼婦の祝福を受けて故郷で結婚しますが、夢破れて吉原に舞い戻ります。ミッキーは、神戸の父親が訪ねてきて放蕩の父親に反発した家出だったことが明らかになります。やすみは、客をそそのかし会社の金を貢がせ、吉原からの脱出に成功します。

 そうかも知れない、さもありなん、という5人の娼婦に、九州の炭鉱から売られてきたしづ子が加わります。しづ子は、いよいよ客を取ることになり、恐る恐る柱の陰から客引きをするシーンで幕。しづ子には、ゆめ子、ハナエ、より江、やすみ、ミッキーのいずれかの運命が待ち受けているいるわけです。しづ子の登場によって、溝口健二の女性観が明らかになります →女は生まれながらにして娼婦であると、...誤解ですねぇ(笑。
 京マチ子以下豪華女優陣以外、これと言って見るところの無い映画です(だと思います)。

 洲崎を舞台にした「赤線地帯」の映画に、川島雄三の『洲崎パラダイス赤信号(1956)』があります。一度須崎を抜け出した元娼婦(新珠三千代)が須崎に舞い戻り、赤線地帯の一歩手前で赤信号にひっかかると云う映画で、こちらの方がよほど面白いです。川島雄三は溝口の『赤線地帯』を見て、俺ならこう作る、となったのでしょうか。

監督:溝口健二
出演:若尾文子 三益愛子 町田博子 京マチ子 木暮実千代 進藤英太郎 沢村貞子

タグ:BSシネマ
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0