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浅田次郎 沙高樓綺譚 [日記(2015)]

沙高樓綺譚 (文春文庫)沙高樓綺譚
 高層ビルの一角にある「沙高樓」と名付けられたラウンジ。そこは、功成り名を遂げた日本のセレブが集い、会員が門外不出のとっておきの体験談を披露してお互いの無聊を慰め合うという社交クラブです。

今宵も沙高樓へようこそ。語らえます方は、誇張や飾りを申されますな、お聞きになった方は夢にも他言をなさいますな。あるべきようようを語り、巌のように胸に蔵(しま)いますことが、この会合の掟なのです。

という女装のオーナーの言葉をマクラに、5つの綺譚を集めた短篇集です。ちなみに、「沙高樓」とは「沙上の楼閣」の意味だそうです。

 本物を超える贋物を作った刀鍛冶の「小鍛治」、いつまでも友だちでいるという一言が一生付いて回る「糸電話」、桜の木の下には死体が埋まっていると云う「百年の庭」、名キャメラマンが語る新選組・池田屋討ち入り映画撮影秘話「立花新兵衛 只今罷越候」、ヤクザの親分の若き日を描いた「雨の世の刺客」の5編。

 第3話「立花新兵衛 只今罷(り)越(し)候」は、勤王の志士が映画撮影セット「池田屋」に現れる怪異譚です。「池田屋事件」がほんの昨日の出来事のように現代に顔を出すという、時間の連続性を描いています。そう言えば、『地下鉄に乗って』、『活動写真の女』、『降霊会の夜』も「時間」に係る話、それも過去と現在が交差するタイムスリップの話です。浅田次郎の小説を支えるテーマのひとつかも知れません。

 浅田次郎の小説は、納涼にはもってこいです。

タグ:読書
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