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映画 クリクリのいた夏(1999仏) [日記(2015)]

クリクリのいた夏 [DVD]
 先日『風に揺れる草』のアンドレ・デュソリエが『クリクリのいた夏』に出ていることを知ったので、再見してみました。パナマ帽を被って自転車に乗って登場する、本と音楽を愛する無為徒食のアメデを演じています。

 一度blogに書いたのですが、改めて見るといい映画で、書き足りたりないところがあるので再度。 『クリクリのいた夏』は、沼地で暮らす貧しい人々の心暖まるひと夏(正確には春から冬まで)を描いた映画です。原題は「沼地の子供たち」。


【ガリスとリトン】
リトン.JPG ガリス.JPG

 時代は第一次世界大戦が終わって12年経った夏。復員兵ガリス(ジャック・ガンブラン)は、沼地のぼろ小屋で老人を看取ったことが縁となり、この沼地に住み着きます。明日は立とう思いながらズルズルと12年が過ぎたのは 、気ままな生活と隣に住むリトン(ジャック・ヴィルレ)、そして今ではリトンの子供クリクリたちとの交流が深まったからです。

 ガリスとリトンは定職につかず、鰻や蛙、カタツムリを採って町で売り、石炭配達や農作業の臨時雇で暮らしています。沼地の住人ですから、ガリスとリトンはいわば最下層に当たります。

 5月の「スズラン祭り」(5/1のメーデイ)で、町の家々を「五月の歌」を歌って門付けをしてなにがしかの金を稼ぎ、野生のスズランを摘んで売り歩くという暮らし振りは牧歌的です。貧しいが自然の恵みと人情のなかで生きているという理想的な暮らしです。この映画はフランスで大ヒットしやようですが、人に郷愁をかきたてる力を持っています。

 ジャック・ヴィルレ演じるリトンは、大酒飲みで楽天的な怠け者。奥さんに逃げられ何かあるとガリスを頼り、ガリスはリトンを助けリトンとその子供たちに慰められるという関係です。

 ワインを振る舞われるシーンで、リントは自分のグラスに注いで飲み始めようとします。すかさずガリスは「まず皆に注ぐのが礼儀だ」とつっこみあす。リントとガリスは「ボケとツッコミ」です。

 「スズラン祭り」の門付けでガリス金持ちの邸のメイド、マリーと知り合い、スズラン売りでリトンはプロボクサーのジョー・サルディ(エリック・カントナ)と揉め事を起こし、サルディは酒場で暴れ牢屋に繋がれます。5/1にスズランを贈ると、送られた人に幸運が訪れるという「スズラン祭り」で、後の物語の伏線が手際よく はられます

【アメデとペペ】
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 リトンとガリスにはアメデ(アンドレ・デュソリエ)という友人がいます。アメデは、働かず本と音楽を愛する自由人。気ままなリトンとガリスの生活に憧れ、沼地の小屋を訪れてはワインを飲み、カタツムリ捕りに加わり、自由を満喫します。気のいい老婦人をふたりに紹介し、後に登場するペペとの再会のキッカケを作ります。カタツムリ捕りのこんな一節で、アメデの、すなわちこの映画の主題が語られます。

「自由とは好きなように時間を使うことだ
何をし、何をしないのかを
自分で選び決めることである」 分かるかね?

俺達のような生き方が、自由だと(ガリス)

そのとおりだ(アメデ)

 この3人に、老人のペペ(ミシェル・セロー)が加わります。ペペは、今では町の金持ちですが実は元沼地の住人。くず鉄拾いから身を起こし会社を経営するまでになった人物です。ペペは、沼地を出て町で生活するようになったことを後悔し、沼地の生活を懐かしみ3人と交遊するようになります。

 リトンに町のホテルから(食用)カエル20ダースの注文があり、居合わせたぺぺが蛙釣りに加勢します。この町の会社経営者は、たちまち120匹の蛙を釣り上げ、昔の腕を披露します。カエル料理を肴にアメデの持ち込んだ蓄音機からジャズを流し、沼地の宴会が催されます。

 ぺぺはリトンの窮状を見かね、1000フランの小切手をプレゼントします。ガリスは喜ぶリトンから小切手を取り上げ、ぺぺに返してしまいます。オレたちは貧乏だがプライドがある、というのがガリスの言い分です。
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 アメデはリトンとガリスの自由を、ぺぺはふたりのプライドを支える存在です。

【ジョー・サルディ】
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 プロボクサーのチャンピオン・サルディは、のどかな4人のドラマには異質な存在です。試合のため町を訪れたサルディは、飲み屋でリトンと揉め事を起こします。リトンは、スズラン売りをサボって飲み屋でとぐろを巻いていたところ、現れた女性を逃げられた奥さんと勘違いして騒ぎを起こします。女性はサルディの恋人だったことから、サルディは大暴れ、飲み屋の椅子テーブルを壊し駆けつけた警官に怪我を負わせて牢屋に打ち込まれます。翌日のボクシング試合は中止となり、チャンピオンベルトを剥奪され選手資格を無くし多額の賠償を請求されるという散々な目に会います。このエピソードは映画の前半に挿入され、折りに触れサルディの刑務所生活とリトンへの復讐計画が挿入されますから、いずれ災難が降りかかるという緊張感が持続します。
 出所したサルディは、猟銃を持って沼地に向かいます。当然殺人など起こるはずもないのですが、ここでクリクリとペペが活躍し、この後サルディはリトンの生活に大きな影響を与えることになります。

【キャスト&スタッフ】
・ジャック・ヴィルレ(リトン)
 『奇人たちの晩餐会 (1998』『ピエロの赤い鼻 (2003))』をはじめ多くの出演作があるようで、ジャック・ベッケル他、フランシス・ヴェベール、パトリス・ルコント、ゴダールなどの映画にも出演している名優です。惜しくも2005年に亡くなっています。
・ジャック・ガンブラン(ガリス)
 『美しき運命の傷痕』意外見たことは無いのですが、今村昌平『カンゾー先生(1998)』にも出演しているらしいです。
・アンドレ・デュソリエ(アメデ)
 『ピエロの赤い鼻』『ロング・エンゲージメント』『アメリ』『風にそよぐ草』『ミックマック』他多くの出演作があります。
・ミシェル・セロー(ペペ)
 セザール賞を何度も受賞した名優らしいです。
・エリック・カントナ(ジョー・サルディ)
 元フランス代表、マンチェスター・ユナイテッドで活躍したプロのサッカー選手だそうです。『エリザベス』にも出演していたらしいですが気がつきませんでした。容貌からすると、 ジェイソン・ステイサムより迫力があるので、何時かブレークするかも知れません。
・ジャン・ベッケル(監督)
 『穴』で有名なジャック・ベッケルの息子さんだそうです。『ピエロの赤い鼻』『画家と庭師とカンパーニュ』も味わい深い作品です。『殺意の夏』というサスペンスがあるらしいので、いつか見たいものです。

 フランス映画は、ハリウッド映画に比べると一味も二味も違います。
 
監督: ジャン・ベッケル
出演: ジャック・ヴィルレ ジャック・ガンブラン アンドレ・デュソリエ ミシェル・セロー エリック・カントナ

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