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原節子 映画 お嬢さん乾杯!(1949日) [日記(2015)]

木下惠介生誕100年 「お嬢さん乾杯」 [DVD]
 『東京物語』で初めて原節子を見たとき、その日本人離れした目鼻立ちにちょっと違和感を持ちました。夫が戦死した後も再婚せず、血の繋がらない夫の両親に暖かく接し、「あんたはいい人だ」と言う義父・笠智衆に「あたくし、ずるいんです」と応えるミステリアスな役柄でした。
 『お嬢さん乾杯!』では、元華族の深窓の「お嬢さん」。婚約者に死なれ、没落した家を守るために家柄の違う男との結婚を迫られるという役柄です。この2本目で、伝説の「永遠の処女」になるほどと納得しました。映画よりも、今回は原節子の魅力を探る鑑賞となります。

 昭和24年ですから、敗戦の傷も癒え、日本全体が復興に向かっている時期です。高知から東京に出た石津(佐野周二)は、闇市から身を興し34歳で自動車修理工場を営むまでになります。五郎(佐田啓二)を闇市で救い弟分とした会話が石津の過去を物語っています。
 この石津に縁談が持ち上がります。相手は元華族のお嬢さん・泰子(原節子)。家柄が吊り合わないと渋る石津は無理矢理見合いをさせられ、美貌の泰子に一目惚れ、泰子の方からも承諾の意向が伝えられます。有頂天の石津に、泰子の口から意外な事実が伝えられます。泰子の父は詐欺事件に連座し刑務所に入っていること、家は抵当に入り3ヶ月で明け渡さなければならないこと、石津の経済力を見込んで縁談が進められたこと、泰子にはかつて許婚がいたことが明らかにされます。泰子の縁談の裏には打算があったわけです。
 これで映画の構図が決まります。元華族のお嬢さんに惚れた「成り上がりの男」と、家を守るために我が身を犠牲にする「お嬢さん」の二項対立です。
 
 泰子はスキーとテニスが得意で英語とフランス語に堪能、ピアノが上手でバレエが趣味。石津は、仕事と金儲けが得意でバー通いとボクシング観戦が趣味。住む世界の違う泰子と石津の縁談の行方、これがストーリーです。
 泰子は家族のために愛の無い交際を始め、石津は泰子に尽くします。シリアスな設定ですが、石津を徹底的に三枚目として描き、泰子を家の犠牲となる悲劇のヒロインではなく石津の愛に答えようとする誠実な女性とすることで、戦後の即物的な価値観が戦前の伝統的な価値観に取って替わるという物語を、ロマンスに仕立て上げます。
 ここにあるのは、結婚の前提が石津の経済力であっても、石津を愛そうとする康子の誠実さが困難を克服してゆくという、むしろ戦前から続く価値観こそが、浮わついた戦後の価値観を凌駕してゆくという世界です。それを、大上段に構えるのではなく、コメディでさらりと言ってのけた木下恵介はさすがです。

 2本見ただけで何とも言えませんが、『東京物語』の紀子はまぎれもなく『お嬢さん乾杯!』の康子の後の姿です。原節子の魅力は、監督が変わっても同じ女性として生き続けることにあるのかも知れません。日本人離れした美貌に、芯の強い古風な日本の女を宿す女優です。

監督:木下惠介、脚本:新藤兼人
出演: 原節子 佐野周二 佐田啓二
 
【追記】
 NHK/BSで下記のとおり原節子の映画が放送されます。
12月9日(水)午後1:00〜3:10
「秋日和 デジタル修復版」1960年 日本
12月23日(水)午後1:00〜3:18
「東京物語 デジタル・リマスター版」1953年 日本

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ぼんぼちぼちぼち

原節子さんの旅立ち、ニュースになってやすね。
大往生のご年齢でやしたね。
合掌でやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-12-01 10:27) 

べっちゃん

伝説の女優ですね。1963年引退ですから、まだご存命だったんだという印象です。
by べっちゃん (2015-12-01 10:49) 

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