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映画 ジュピター(2015米英豪) [日記(2015)]

ジュピター [DVD]
 『マトリクス』のウォシャウスキー姉弟のSFと聞けば期待が膨らみます。

 原題は“Jupiter Ascending”。『ジュピター』の世界は、異星の王族が宇宙を支配し、彼らは多くの惑星に自分達のクローンを「飼っている」という世界。従って、異星人も地球人も姿かたちは異星人と同じです。惑星の人間が繁殖し飽和点に達すると、異星人は人間を「収穫」します。1950年代のSF小説の焼き直しのような世界です。収穫して食べるのではなく、不老不死の薬を人間から抽出するんですからちょっと笑ってしまいます。

 で宇宙人の地球襲来の映画かというと、それ以前の話で、地球の所有をめぐって長男、長女、次男の三兄弟が争う話です。言わば親の遺産である牧場をめぐって骨肉が争うという西部劇です。この三兄弟に加えて新たに妹(4人目の相続人)が現れ、この妹を助ける「さすらいのガンマン」が加わって4人が相討つ戦いを繰り広げる、これが『ジュピター』です。

 もう少し正確に言うと、女王であった母親が亡くなって三兄弟が宇宙を支配し、母親の遺産を継いだ長男が地球を所有しています。この世界では、同じDNAを持った人間が生まれ変わりとして認められ、地球人のジュピター(ミラ・クニス)が兄弟の母親と同じDNAを持っていることが明らかになります。ジュピターが女王になると長男の地球所有権は失われるため、長男はジュピターに刺客を放ちます。これを知った次男は、傭兵のワイズ(チャニング・テイタム)をジュピター救出に向かわせます。救出とは言っても、ジュピターを確保して結婚すれば、地球が手に入るという目論みです。
 映画は、戦闘用宇宙船や反重力ブーツを履いたワイズと、長男率いる傭兵との戦いが見せ場ですが、ストーリーがストーリーですから、これらSFの道具立てとアクションが浮いてしまってまいます。この世界はテクノロジーだけは発達していますが、遺産相続争い、地球人を収穫して得る不老不死の薬が経済の根幹であるなど、現代社会と何ら変わるところがありません。ケッサクなのは、ジュピターが女王即位のために手続きするシーンです。この世界にも役所があって、ジュピターは証明書を求めて役所の窓口を右往左往、たらい回しにされワイロを使って切り抜けます。これってSFですか?。

 要は遺産相続の話ですから、舞台が開拓時代の西部であっても現代の日本であっても成り立つ映画で、SFの姿を借りる必要は全くありません。異星人の社会にもお役所があり、主人公が窓口をたらい回しされるエピソードなどは、もう落語の世界。
 『マトリクス』のウォシャウスキー姉弟を当てにすると、確実に裏切られます。

監督:ラナ・ウォシャウスキー アンディ・ウォシャウスキー
出演:チャニング・テイタム ミラ・クニス ショーン・ビーン エディ・レッドメイン ダグラス・ブース

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