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いとうせいこう ボタニカル・ライフ - 植物生活 [日記(2016)]

ボタニカル・ライフ―植物生活 (新潮文庫)
ベランダー.jpg
 ”ボタニカル”は植物的という意味ですから、「植物的生活」というタイトルです。植物男子の日常ではなく、文字通り植物を育てる生活、園芸家の日常を綴ったエッセイです。 著者は園芸家と言わず、”ベランダー”と自称しています。園芸家は庭で植物を育てる人はガーデナーですが、いとうせいこうサンはベランダで鉢植えの植物を育てているので、”ベランダー”を自称しています。
 実は、この本は、NHK/BSのかなり変わったドラマ「植物男子ベランダー」の原作です。

《アマリリス クリスマスの新しい恋人》

1年前の今頃、俺はアマリリスに対するその強い愛を告白したのだった。してしまった以上は責任を取ろうと思った俺は、咲き終えたアマリリスの鉢をそれはそれは大切に管理し続けてきた。

 まぁこういった具合に、植物に対する偏愛が語られます。私、僕ではなく《俺》、植物は《やつら》と呼びます。いとうせいこうサンは、植物男子の軟弱な「ボタニカル・ライフ」をハードボイルドに語ろうということです。

ここぞと思う時に置き肥をやった。・・・あたかも玄関にそっとプレゼントを置くようにして、俺はアマリリスの歓心を買おうとしたのである。愛に乾いているなと感じられるその瞬間、俺は酒でも飲ませるようにアンプルをさしてやり
・・・云々。

 肥料をやるのに、何もここまで書くことはないでしょうが。ところが、球根を掘り上げることをしなかったため、今年は花が咲かなかったのです。せいこうサンは、「冬をアマリリスなしですごすわけにはいくまい」と花屋で咲くアマリリスに浮気をします。

新しいアマリリスはその日の夜から女優活動を始めた。天に向かう二つの蕾がまず左右に割れ、それぞれが色づきだした。中央には続く蕾の片鱗があった。次の朝には色づいた蕾がもう膨らんでいた。あたかも水しぶきを上げる鯨のようなフォルムで蕾はしなを作っている。

ちょっとオーバーですが、この感覚よく分かります。咲かないアマリリスに水をやりながら、

アマリリスは俺のボタニカル・ライフに三角関係を持ち込んでしまったのである。
 

 笑ってしまいます。ひょっとして、これはアマリリスの話ではないのかもしれません。 たぶん、園芸を趣味としない人には面白くも何ともないと思います。犬、ネコの本はたくさんありますが、植物を語ったエッセイというのは珍しいです。


タグ:読書
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