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映画 イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014英米) [日記(2016)]

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 コレクターズ・エディション(2枚組)[初回限定生産]アウタースリーブ付 [DVD]
 ブレッチリーパークを舞台に、数学者アラン・チューリングがエニグマの暗号を解読する話です。同様の映画に『エニグマ(2001独英)』があります(お薦めです)。『エニグマ』は、暗号解読の話に「カチンの森」を絡め、解読チームに潜むドイツのスパイを炙り出すミステリです。一方『イミテーション・ゲーム』は、ミステリですが、数学の天才だが狷介で独善的な同性愛者アラン・チューリングという人物を描くことに重点がおけれています。
 冗談が通じず傍若無人なチューリングの性格は、発達障害を思わせます。こうした障害は、時に常人を越えたある種の能力が伴うといいますから、チューリングの数学的天分は、彼の性格とトレードオフの関係にあるのかも知れません。映画的に言うなら、ジョン・ナッシュを描いた『ビューティフル・マインド』です。

 1951年、ケンブリッジの教授アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の自宅に泥棒が入ります。チューリングはソ連のスパイではないか(当時ケンブリッジ卒業生のスパイ事件が続発した)と疑いを持った刑事は、チューリングの履歴を調べると謎だらけ。何故か軍歴が抹消されていることが判明します。アラン・チューリングとはいったい何者なのか?。舞台は1939年、ブレッチリー・パークに移ります。

 チューリングは、海軍にスカウトされ、ブレッチリー・パークでエニグマの暗号解読に携わることになります。チューリングとってエニグマはパズルの延長であり、最難関のパズル解読に情熱を傾けるきとにになります。
 チューリングをリーダーとするチームは、「チューリング・マシン」を開発しエニグマの暗号解読に成功します。様々のエピソードに飾られたこの成功物語(Wikipediaの「運用する人間の心理を突いた解読」が参考になります)も面白いですが、この映画のタイトル『イミテーション・ゲーム』が意味を持つのは、解読成功後の物語です。
エニグマ.jpg エニグマ2.jpg
 チューリングたちはドイツ軍の暗号を次々に解読し、大西洋に展開するUボートの位置を特定します。イギリスの輸送船団がUボートの攻撃を受ける情報を入手しますが、チューリングはこの情報を握り潰し輸送船団を見殺しにします。輸送船団を救うために戦艦、航空機が駆けつけると、イギリスがエニグマの暗号解読に成功したことにドイツは気づき、新たな暗号を使う筈です。英独の暗合戦は振り出しに戻ってしまいます。暗号解読の成功を隠蔽するために輸送船団を見殺しにしたわけです。
 チューリングとMI6は、暗号解読の成功を隠し続けます。言い換えれば、戦争終結まで味方をも欺く「見殺し」が続いたわけです。チューリングは、MI6のミンギス(マーク・ストロング)に この「見殺し」を提案します。その時のミンギスの答えが奮っています、

最上層部(チャーチル?)を騙すわけか、我々がもっとも得意とすることだ

 この「見殺し」を隠蔽するため、1970年代までブレッチリー・パークでのチューリングの功績は機密となり、チューリングの軍歴は抹消されたわけです。
 1952年、チューリングは同性愛の罪(1967年までイギリスでは違法)で起訴され、1954年自殺しています。

 この映画から「真珠湾攻撃陰謀説」を連想します。第二次世界大戦に参戦したいルーズベルトは、暗号解読によって真珠湾攻撃を事前に察知しながらこの情報を握り潰したというものです。『イミテーション・ゲーム』はそうした過酷なインテリジェンスの世界を垣間見させてくれる映画です。
 
 もうひとつが、傲岸不遜で同性愛癖のチューリングです。

時として、誰も予想しなかった人物が
誰も想像できなかった偉業を成し遂げることがある

というセリフが何度も登場します。「誰も予想しなかった人物」とはチューリングを指しますが、言外に彼の「同性愛嗜好」が隠れていると思われます。暗号解読チームの同僚は、影でチューリングをその才能と性格をも含め”モンスター”と呼んでいます。このセリフは、「同性愛者のモンスターが、誰も想像できなかった偉業を成し遂げた」ということでしょう。チューリングの婚約者であったジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)の言葉を借りれば、普通ではない人物だからこそ普通では出来ない仕事ができたのだ、ということです。
 2012年に英国貴族院に正式な恩赦の法案が提出され、2013年12月24日にエリザベス2世女王の名をもって正式に恩赦が発効した。キャメロン首相は、彼の業績をたたえる声明を発表した。 ということですから、『イミテーション・ゲーム』はチューリング完全復権の映画でもあるわけです。 

監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ベネディクト・カンバーバッチ キーラ・ナイトレイ マーク・ストロング


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