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映画 舟を編む(2013日) [日記(2016)]

舟を編む 通常版 [DVD]
 原作は2012年本屋大賞の三浦しをんの同名小説。15年におよぶ国語辞書の編纂を追ったドラマです。「船を編む」とは耳慣れない表現ですが、映画の登場人物である辞書の編集主幹である松本(加藤剛)によると、辞書は言葉の海に漕ぎだす船だそうです。従って、「船を編む」とは辞書を編纂するということです。

 大手出版社の営業職馬締(松田龍平)は定年退職するベテラン社員の後任として辞書編集部に異動となります。大学院で言語学を専攻した馬締は、名前通り真面目一方の堅物で、コミュニケーション能力ゼロ。営業としては失格ですが言葉のセンス(犬が西向きゃ尾は東、の類)を認められ 、出版社が企画する辞書「大渡海」の編纂にたずさわることになります。辞書の編纂は、語彙集めとその用例、解釈から成り立っているようで、「用例採集」と「語釈」と言うそうです。そういえば、三省堂「新明解国語辞典」はこの採取された語彙と用例、語釈の独自性で話題となりました。

 この映画の面白さ(クスグリ)は、この馬締と周囲との落差です。落差が辞書の「用例」と「語釈」によって描かれます。落差を裏からあぶり出すため、何処から見ても現代の若者の典型である同僚・西岡(オダギリジョー)が配されます。
 馬締が恋をします。相手は下宿の主人の孫・香具矢(宮崎あおい)。十五夜の宵に現れたのでかぐや姫。馬締の恋を知った松本は、恋の語釈を馬締に命じます。西岡が担当するのが「ダサイ」の語釈です。

【恋】
ある人を好きになってしまい、寝ても覚めてもその人が頭から離れず、他のことが手につかなくなり、身悶えしたくなるような心の状態。成就すれば、天にものぼる気持ちになる。
【ダサイ】
時代遅れ。田舎臭い。鈍臭い。恥ずかしい位、主流派。要は格好悪い。用例:酔ってプロポーズとかまじダサいよね。

ちなみに広辞苑第四版(電子版)を見ると、
一緒に生活できない人や亡くなった人に強くひかれて、切なく思うこと。また、そのこころ。特に、男女間の思慕の情。恋慕。恋愛。万二○「常陸さし行かむ雁もが吾(あ)が―を記して付けて妹に知らせむ」。「―に身を焼く」
ださ・い
《形》野暮ったい、洗練されていない意を表す俗語。「―・い格好」

とあります。ナルホド、辞書も進化しているんですねぇ、たぶん。もう広辞苑第四版を卒業しないといけません。

 コミュニケーション能力のない馬締がどのように恋の告白をするのかが見せ場です。毛筆草書体で事項の挨拶から始まる「恋文」をしたためるわけです。そこまで常識からかけ離れた男もいないでしょうが小説、映画です。「ラブレターより言葉で言ってみて、今」と香具矢に言われ、オロオロする馬締に「今、今よ、辞書でもひく?」とたたみかけられ、馬締は辞書を取りに行こうとする有り様。万事がこの調子ですが、馬締の恋は(予定通り)成就し、「大渡海」は完成します。

 たわいのないラブストーリですが、辞書編纂を背景に使ったところがミソ。

監督:石井裕也
出演:松田龍平 宮崎あおい オダギリジョー

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