SSブログ

日韓映画見比べ 『万引き家族』と『パラサイト 半地下の家族』 [日記 (2021)]

万引き家族 通常版DVD(特典なし) [DVD] パラサイト 半地下の家族 [DVD]
 『万引き家族』と『パラサイト 半地下の家族』は、東京とソウルに暮らす「家族」の物語です。『万引き家族』はカンヌ国際映画祭パルム・ドール、『パラサイト』はパルム・ドール+アカデミー賞作品賞、監督賞受賞で、何事につけ日本と比較する韓国世論では「日本に勝った」ということになったんでしょうね。最近「日韓」に凝っているので見比べて見ましたw。

 どちらも「家族」の話です。『万引き家族』は、下町に住む6人の家族が実は「赤の他人」だった→家族とはそもそも何なのかというのがテーマです。『パラサイト』の方は、「半地下」に住む4人の家族が山手の裕福な家族に「寄生する」話で、社会格差がテーマです。人と人の絆が希薄とばった日本、格差が社会に影を落とす韓国、それぞれの今日的な問題を主題にしています。

背景
 『万引き家族』は、治と信代夫婦とお祖母ちゃん、息子の祥太、信代の妹亜紀の5人家族。お祖母ちゃんは年金暮らし、治は建設労務者、信代はクリーニング工場のパート、亜紀はフーゾクでアルバイト、祥太は小学校にも通っていないという家族。治と息子は家族公認の万引常習犯。治が幼いユリを自宅に連れ帰ったことで物語の幕が開きます。ユリは父親からDVを受け母親にはネグレクトされていたことが明らかになり、ソレって誘拐じゃない?という亜紀に、身代金を要求したわけではないから誘拐じゃない、と言う信代の一言でユリは家族の一員となります。

 『パラサイト』は、半地下の住居に暮らすキム・ギテク一家は、主人と妻は失業中、息子のギウと娘のギジョンは大学浪人で誰も生業に就いていないという家族。宅配ピザの箱折の内職をし近所のwifiを無断使用していますから、一家の窮状が伺い知れます。失業したギテクは、台湾カステラや鶏の唐揚げの自営に手を出し失敗した会話があり、半地下とともに韓国の世相を映している様です。

 ギウが友人の紹介で豪邸に暮らす社長パクの娘の家庭教師を始め、ストーリーが動き出します。ギウは、自分一家の暮らしと社長一家の暮らしのあまりの違いに驚き、この落差を埋めるために一計を案じます。ギウは妹をパクの息子の絵の教師として送り込み、パク家の運転手と家政婦を追い出して父親と母親を後がまに据えます。ギテク一家4人は、パク家に潜り込みパク家に「寄生」することで半地下の生活から抜け出そうとしたわけです。ギテクは、警備員の求職に大卒の青年が何十人も殺到する時代に、我が家は4人全員が就職できた、と喜びます。この「パラサイト(寄生)」はコメディとしては秀逸です。

破綻と結末
 『万引き家族』では、息子の祥太が万引きで警察に捕まり、芋づる式に一家の正体が露見します。お祖母ちゃんの不在から、年金目当ての死体遺棄がバレ(床下に埋められいた)、捜索願の出ているユリが発見され、6人は血の繋がりのない他人同士であり、一家はそれぞれの事情を抱えた6人が集う「共同体」だったことが明らかにまります。
 信代は死体遺棄の罪を被って収監、治は執行猶予、祥太は施設、亜紀とユリは家族の元に戻ります。それなりに幸せだった家族は、国家の制度によって解体されたのです。家族揃っての海水浴シーンは、ここに至って全く違った風景となって見えてきます。
 施設を抜け出したと祥太は、治と束の間の「父子」を演じ、翌朝バスで去る祥太と治の別れのシーンは新しい家族の誕生を予感させます。

 『パラサイト』の方も、富裕層に寄生したギテク一家が破綻します。追い出した家政婦がパク家の地下シェルターに夫を匿っていたことがギテク一家にバレ、ギテク一家もパク家に寄生していたことが家政婦にバレます。ここからはスラップスティック、家政婦の夫は刃物を持って折から開かれていたパク家の野外パーティに突如乱入(動機が不明)、娘を殺されたギテクも錯乱してパク社長を刺殺。高利貸から逃れてシェルターに隠れていた男と半地下の住人、抑圧された二人の男の富裕層への反乱なんでしょうか。半地下の住居が豪雨で浸水するエピソードと合わせると、韓国の抱える格差の病理は深刻です。警察に追われるギテクは、家政婦の夫がそうだった様にシェルターに隠れます(これも一種の寄生?)。

東京とソウル
 『万引き家族』と『パラサイト』は、同時期に東京とソウルの家族を描いた映画です。東京では「家族の絆」が問われ、ソウルでは「社会格差」が問われます。
 東京の家族もソウルの家族も貧しいのですが、東京の家族はそれぞれ職業を持って働き(祥太も万引きによって家族に貢献?)それなりに充足した生活を送っています。信代は、家族はDVで行き場を失ったユリを引き取り、お祖母ちゃんの死体を「遺棄」したのではなく一人暮らしのお祖母ちゃんを「拾ってやったの」だ言います。一方ソウルの家族は富裕層のパク家に寄生することで「半地下」の生活からの脱出を図ります。貧しい者は富める者の施しを受けて(寄生して)当然だという儒教の伝統かも知れません。

 ラストのシーンも印象的です。治と祥太の別れのシーンは、新たな家族の再生を予感させます。ソウルの家族は、ジウが富裕層になって父親を取り戻したという成功物語で終わります。

 日本人ですから、「寄生」よりも「絆」に一票。

タグ:映画
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。