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ストレンジャー  上海の芥川龍之介(2019 NHK) [日記 (2022)]

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 『ストレンジャー  上海の芥川龍之介』は、芥川の紀行『上海游記』などを原作とするNHKのドラマです。
 冒頭「(上海取材を)よく引き受けてくれましたね」と言う大阪毎日新聞、上海支局長(岡部たかし)に、芥川(松田龍平)は女から逃げたかったからと答えます。愛人が、芥川との間できた子供を連れ自宅に押し掛けて来ることを繰り返していたからです。事実の様で、芥川の愛人問題を初めて知りました。
 
 芥川が上海を訪れたのは大正10年(1921年)。辛亥革命で清朝が倒れ中華民国が建国されて10年ですが、孫文ら国民党勢力は袁世凱政権打倒のため第二革命を起こします。孫文は上海に拠点を移して中国国民党を組織し、1921年には上海で中国共産党が結党されるという、中国の政治的混乱期です。芥川は、そうした混乱の中国のルポルタージュを期待されたのでしょう社命もあるので、辛亥革命の指導者のひとり章炳麟、清朝の遺臣・鄭孝胥、共産党の設立メンバーである李人傑などに取材しています。取材には力が入らず、章炳麟の部屋の壁に架かっている鰐の剥製に気を取られている有様。芥川龍之介が来てくれたというので、上海支局は芥川を歓待します。で、ドラマのメインは妓館での酒宴とそこで出会う玉欄(胡子玫)、愛春、時鴻などの妓生たちとなります。芥川は玉欄を、大悪党の愛人となったが男が処刑されたため上海に逃れてきた薄命の美人だと評します。
 
 中国の女性は好きかと酒席で聞かれ、芥川は耳が綺麗だと答えます。日本女性の耳は髪で隠されているため「堕落」して顔から生えている茸の様になったが、中国女性の耳は何時も春風にふかれイヤリングで飾られて美しくなった、と。
 上海は、乞食に娼婦、清朝の遺臣に革命家。屋台に酒楼、阿片窟に芝居小屋と混沌が支配する魔都。玉欄たち美妓は、魔都の奥深い妓館の深窓に咲いた徒花です。『上海游記』には描かれていませんが、芥川はその美しい耳を持つ玉欄と一夜を共にします。愛人騒動といいこの耳への偏愛といい、理知的な小説を書いて「将来に対するぼんやりした不安」から自殺した小説家の以外な一面です。
 
 もうひとり、聾唖の男娼・ルールー(薛八一)が登場します。芥川は、ルールーが誠実で且つ文字を読み書きすることを知ります。それを聞いた支局長は、聾唖のルールーは身を売るしか生きる術が無かったのだろう、文字が読み書きできるということは、元は高貴な生まれだったかも知れないと嘆息します。ルールーは現代中国の象徴でしょう。芥川は、知識を付ければ男娼の境遇から抜け出すことが出来るとルールーに本を読むことを勧めます。後日、本を持って行くとルールーは既に亡く、労働運動の集会で殴り殺されたのだと言います。ここで玉蘭が娼婦以外の役割を担います。彼女は、斬首された愛人の血を染み込ませたビスケットを出し、その場に居合わせた妓館の人達に食べさせます。ビスケットの血は玉蘭の愛人のもので、ルールーと繋がりは無いわけです。血の滲みたビスケットを食べることでルールーを追悼し、ルールーは、読み書きは出来るが話すことも聴くことも出来ないが古い歴史を誇る中国は、彼、彼女の中で行き続け再生するということでしょうか?。ちなみに『上海游記』にこのルールーは登場しません。
出演:松田龍平、岡部たかし、中村ゆり、奈緒、金世佳
注)スマホで書いているのでフォンとがオカシイ、他意はありません。

タグ:映画
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