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村上春樹 やがて哀しき外国語  [日記(2007)]

やがて哀しき外国語

やがて哀しき外国語

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/02
  • メディア: 文庫

 1991から2年半、作家がプリンストン(大学)に滞在した折りのエッセーである。村上春樹のエッセーは「村上朝日堂」しか読んでいないが、(「村上朝日堂」も結構面白いが)これはこれで団塊の世代がアメリカで暮らす風景として共感を覚える(住んだことも無いのに共感もないものだが)。東部のプリンストンというコンサバティブな街で大学客員として暮らす体験には「これがアメリカだ」みたいな異文化体験的な肩肘張ったカルチャー論議も無いし、どちらかと云うと普通の人の普通の生活を、村上春樹が綴ったいう安心感がある。

「ブルックス・ブラザーズからパワーブックまで」を読むと、VANジャケット世代のアメリカに対する郷愁と鬱屈がよく出ている。ブルックス・ブラザーズは言うまでもなくトラッドな服飾店で、パワーブックはアップルのパソコンである。40台半ばの村上春樹氏は、アメリカで買うものが(買いたいなと思うものが)無かったと宣う。ジョン・F・ケネディーやポール・ニューマンが着こなしたスーツやジャケットの彼方にある「アメリカ」は最早存在しないと嘆く。氏がアメリカで買ったものは、車はVW、家具はイケア、オーディはデンオン、TVはsonyだったらしい。そして唯一のアメリカ製品はマック(apple)だったというオチが付く。別に経済のグローバル化とアメリカ工業力の凋落を論じた文章では無いが。(ヘェ~村上春樹はマックで原稿書いているんだ。)
 そう云えば、80年台末~90年代前半のアメリカを旅行したが、買ったものと云えば、アーミーナイフ(スイス製)とつまみのビフジャーキーと子供の土産のルアーやデゴイだった。アメリカ製と云えばZippo程度、appleのパソコンは欲しかったが、こちらは買わなかった(もって帰るのが大変)。服装に興味が無いのでブルックス・ブラザーズは行かなかったが、NYのエディー・バウアーで奥さんのセーターを買った。アメリカ製ではなかったろうが、ちょっと日本には無いデザインだった。

 作家のプリンストン滞在記と云うと、古くは文芸評論家・江藤淳の「アメリカと私」がある。村上春樹と同様、作家としてプリンストンに招かれ、プリンストンでの生活を綴った随筆である。昔読んだので記憶があいまいだが、江藤淳の「アメリカと私」には、アメリカで生活する初々しさと気取りがあったような気がする。1960年代と90年代の時代の差、江藤淳と村上春樹の資質と云うより世代の差であろう。

江藤淳と読み比べると更に面白そう →☆☆☆☆★

アメリカと私

アメリカと私

  • 作者: 江藤 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1991/03
  • メディア: 文庫


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