SSブログ

映画 ラスト・エンペラー 1987年 伊中英 [日記(2008)]


ラストエンペラー

ラストエンペラー

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • メディア: DVD


 『甘粕正彦 乱心の荒野』が面白かったので、本で紹介されていた『ラスト・エンペラー』を視ました。坂本龍一が演じる甘粕正彦を是非とも視たかった訳です。その話は後にして、『ラスト・エンペラー』は、清朝最後の皇帝にして満州国の最初で最後の皇帝となり、戦後も中国で生き延びた愛新覚羅・溥儀の生涯を描いたものです。中国政府の全面的バックアップで紫禁城でロケを行っているため、皇帝の戴冠式?や閲兵、溥儀の日常生活など映像は視応えがあります。これだけでも視る価値がありそうです。◆ベルナルド・ベルトルッチ(監督・脚本)
◆ジョン・ローン(溥儀)
 溥儀の若い頃は別の俳優が演じていますから、ジョン・ローンは皇帝を廃された後の溥儀、日本軍の傀儡となる満州国皇帝の溥儀、満州滅亡後の溥儀と、流転の皇帝を演じます。満州国皇帝として日本軍部の傀儡となる憤懣、戦後に政治犯収容所で一政治犯として耐える演技はなかなかのものです。

◆ピーター・オトゥール(溥儀の英国人家庭教師レオナルド・ジョンストン)
『アラビアのロレンス』の頃と比べると年を取ったな(まだ45歳)と思いますが、オックスフォード卒、後ロンドン大学教授となるSirが付く英国インテリははまり役です。ちょっと上目遣いの碧眼や含羞のある口元は健在でやはり貫禄ですね。
ジョンストンは、後に原作の一部となる『紫禁城の黄昏』を書いています。

◆坂本龍一(甘粕正彦)
 この人は何に出ても『戦場のメリークリスマス』ヨノイ大尉のイメージです。満州の『夜を支配した』甘粕正彦が昼の世界に登場して溥儀に詔勅署名を迫ったり、満州皇帝就任式で(映画撮影の)カメラの指示を出したり(満映の理事だから)、最後に拳銃自殺を遂げる(実際は服毒自殺)などの描写は戴けません。まぁ服毒自殺では絵になりませんが。せっかく坂本龍一を起用したのですから、もっと謎めいたダークな演技をする場面を用意出来なかったものかと思います。
どの場面だったか忘れましたが、川島芳子と思しき(男装の麗人だから)女性と密かに手を握り合う描写がありましたが、これもどうなんでしょう?
Wikipediaによると、制作協力者に李文達(溥儀の自伝『わが半生』の共著者)、愛新覚羅溥傑(溥儀の弟)、郭布羅潤麒(皇后婉容の実弟)の名が挙がっていますが、『満州』を描くからにはそれなりの日本人スタッフの参加があれば面白かったと思うのですが。
これもWikipediaによると『甘粕正彦役には、当初映画監督の大島渚を予定していたが断られた。そのため、既に音楽担当に決まっていた坂本龍一が代役をつとめることになった。』とあり、大島渚の方が『絶対に』はまり役だったと思います。スタッフとしても参加すれば、満州の映像はもっと違ったものになったと思われます。かえすがえすも残念。

◆英若誠(政治犯収容所長)
溥儀を自殺から救い、収容所長として溥儀の尋問に立ち会うなど結構重要な役どころです。最後に紅衛兵に反動分子として引き回され、それを見た溥儀が助けに入る場面などは、中国が清朝から日中戦争を経て中共へと時代が変遷して行く様を描いて感慨深いものがあります。映画が制作された1987年当時は文化大革命の軽佻浮薄を描くことが許されていた様です。溥儀の紫禁城での戴冠式を文武百官を揃えて盛大に描いた訳ですから、文革も、天安門広場を埋め尽くす紅衛兵と一庶民となった溥儀を対比し、時代と運命の落差を映像にして欲しかったと思います。
この収容所長ですが、原作となった溥儀の自伝『わが半生』にはどう書かれているのか興味があります。それにしても進藤英太郞(東映の悪役)そっくりです。

第60回アカデミー賞 (作品賞、監督賞、撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣裳デザイン賞、美術賞、作曲賞)ならびに第45回ゴールデン・グローブ賞 ドラマ部門作品賞受賞作品。作曲賞は坂本龍一で、日本人初です。

アカデミー賞9部門受賞するほどの名作かと云うと?でしょうか。

関連図書(サイト内)
R・F・ジョンストン 紫禁城の黄昏(上)
R・F・ジョンストン 紫禁城の黄昏(下)
角田房子 甘粕大尉
佐野眞一 甘粕正彦 乱心の曠野
浅田次郎 珍妃の井戸

紫禁城の黄昏―完訳 (上)

紫禁城の黄昏―完訳 (上)

  • 作者: 中山 理
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本


タグ:満州
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 2

Betty

傑作作品の一つだと思っています。
紫禁城の描写・衣装・音楽・すべての色使いがすばらしいです。
オープニングのグレーな世界から一転した華やかな描写に圧巻です。
内容も心に残る作品で考えさせられます。
by Betty (2008-06-16 13:52) 

べっちゃん

何時もコメントをいただきましてありがとうございます。確かに衣裳は素晴らしいですね。思わず『紫禁城の黄昏』を発注してしまいました。
by べっちゃん (2008-06-16 22:17) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0