SSブログ

浅田次郎 憑神 [日記(2009)]

憑神 (新潮文庫)

憑神 (新潮文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 文庫
 この人の小説はまず裏切られ事は無い、と云うほどの巧者です。本書『憑神』は舞台や映画にもなっています。
 物語は、維新もすぐそこと云う江戸末期、七十俵五十人扶持の御徒士組次男坊・別所彦四郎が主人公です。

 別所家は、徳川に使えて250年続いた由緒正しき御徒士の家柄。役目は将軍の『影武者』で、先祖は関ヶ原の戦いでは影武者として真田幸村と戦った云います(この影武者がストーリーの伏線ともなっています)。彦四郎は、昌平黌(しょへいこう)に学び、剣は直心影流男谷道場の免許皆伝という文武両道に秀でた青年です。がこの彦四郎、次男(部屋住)ですから別所家の跡継ぎとはなれず、養子に出ていたのですが、仕事の失敗から養家を追い出され出戻っているという惨めな境遇にあります。彦四郎が川端の祠に就職の願をかけたことから物語が始まります。

 この祠はじつは福の神ならぬ『祟り神』の祠だったのですから大変。まず彦四郎に『憑』いたのが『貧乏神』、次いで『疫病神』に『死神』。この神々と七十俵五十人扶持の御徒士組次男坊が武士の誇りと意地をかけて戦う抱腹絶倒の物語です。『地獄八景亡者戯』という上方落語がありますが、似ていなくもないです。

 例えば『死神』は童女の姿で現れ彦四郎に取り憑き,別所家の家族と夕食を供にするという親密ぶり。
ふたりの会話なんか落語です(^^;)。

彦四郎 「早く死ね、とせっついておるのだな
童女(死神) 「あたいはおじちゃんのことも、みなさんのことも大好きだから、せっつくつもりはないんだけど。上のほうからやいのやいの言われちまってさ
彦四郎 「ふむ、さもあろう。務めを果たせずにぶらぶらとしておれば、文句をつけられるのも当然だ。

死に神も宮仕えなんですね、笑ってしまいます。

 榎本釜次郎(武揚)や勝海舟も出てきますが、せっかく登場させたのなら端役ではなくせめて脇役くらいには使って欲しかった。オチなんですが、もうひとつ浅田次郎の切れがありません(影武者に拘りすぎた?)。最後は彦四郎の晴姿ですから、舞台からはやんやの拍手で幕でしょう。セリフも登場人物も面白いので舞台には最適でしょう。
が、小説としては・・・★★半かな。


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0