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中野孝次 犬のいる暮し [日記(2010)]

犬のいる暮し (文春文庫)

犬のいる暮し (文春文庫)

  • 作者: 中野 孝次
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/01
  • メディア: 文庫
 本書は有名な『ハラスのいた日々』の続編に当たります。人と犬の関係を余すところ無く描き、犬好きは思わず頷いてしまうエピソードにあふれています。

主人の帰りを待ちわびている犬が、主人と出会った際の描写です、

 人間にはとうてい不可能なくらい、犬は全身でよろこびをあらわす。跳び上がって主人にからだをぶつけ、手といわず顔といわず舐め、声をあげて安堵と歓喜のさまを示す

ほんとうにその通りです。帰宅した時の犬の出迎えは、犬を飼った者にしかわかりませんね。

 実はわが家は犬を飼っていません。親族の駄犬が毎週の様に遊びに来ます。飼い主が里帰りだ旅行だというと、長いときには1週間も10日も預かったりします。掌に乗るほどの子犬の頃からの付き合いですから、わが家の飼い犬と変わりません。この駄犬がやってくると、それこそ全身全霊で奥さんや(かろじて私にも)跳びつき顔をなめ回します。当然その日は一日、奥さんの機嫌は麗しいわけです。

 駄犬が来ると、今日の散歩はどうだった、こんなイタズラをしたなどなど、(中野家同様に)普段の何倍もの夫婦の会話が成立してしまいます(駄犬が帰ると、一日の会話は数語(^^;)。先日、駄犬を獣医さんに預けて家族で旅行に行ったのですが、駄犬は今頃何をしているだろうかに始まって、次回の旅行は駄犬を連れて行こうなどという会話になります。

 夫婦喧嘩をした場合の血圧の変化は、ペットがいない場合は血圧が平常より50程高くなるに対し、ペットを飼っている夫婦の場合は、10程度の上昇でおさまる

という報告もあるそうです。笑いますが、納得してしまいます。

 本書では、初代ハラスから始まって、二代目マホ、三代目ハンナ、四代目ナナにいたるた犬との30年に及ぶ生活が語られます。たかが犬されど犬、著者と犬の交流は読むものの心まで温かくしてくれます。

 江藤淳にも本書とよく似た『犬と私』という随筆があります。相当昔に読んだのですが、『漱石とその時代』の強おもての江藤淳にもこんな一面があったのかとその時は不思議に思いましたが、犬を飼い、『ハラスのいた日々』や本書を読むと、何千年何万年?続いてきた犬と人間の関係に思い至り、納得します。

 犬好きの人には『ハラスのいた日々』と本書はお薦めです。

駄犬.jpg


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