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毎日新聞 今週の本棚 1Q84 BOOK3 [日記(2010)]


 『ピュアな原点への華麗な退却戦』と題して沼野充義の書評が掲載されています

 スリリングな探偵小説のような展開だが、物語は少々停滞気味になる。牛河が解き明かすのは、Book2までの読者がおおよそ既に知っていること以上ではないし・・・前編のいたるところに仕掛けられた謎や重い倫理的問題がすっきり解決されるとは言いがたい。

そうですよね、すっきりしません。

 リトル・ピープルとはいったい何者なのか? 女性に理不尽な暴力をふるった男は、殺されてもいいのか? 人はなぜカルトに走るのか? 親に抑圧された子供に救いはあるのか? そもそも「1Q84」という世界は何なのか? 

BOOK1,2で、作者としては相当『大風呂敷』を広げたわけです。特に《リトル・ピープル》は作者の創造物ですから、もう少し納得のいく解答があってもいいのではないかと思います。

 私は、ここで村上春樹は一種の華麗な退却戦を戦ったのだと思う。

華麗な退却戦かぁ、うまいこと言いますね。これだったら作者もムラカミ・ファンも傷つきません。でもですね、退却というのは、形勢不利で後へさがることですよねぇ。自分の立てた命題に作家としての解答が出せず、自らしっぽを巻いて退却した、とも云えますね。

 自分で自分に課した問題が大きすぎたとも言えるだろう。しかし、この「退却」は決して否定的なものではない。作家は結局、彼のピュアな原点に立ち帰った。

この文章の力点は前半部分《大きすぎた》ですね。《ピュアな原点に立ち帰った》と云うのも《華麗な退却戦》同様に気遣いでしょうね。

 これは、神なき時代の軽さを宿命として生きなければならない人々の物語なのだ。村上春樹はドストエフスキーではない。Book3はひとまず終わった。

ドストエフスキー読んだ方がいいよ、ということでしょうか。
礼儀正しく、1Q84はブンガク的営為としては成功していない、というこの沼野充義サンの書評は当たっていると思います、


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