映画 ファーゴ(1996米) [日記(2012)]
なんとか4万ドルの都合をつけないといけないメイシーは、狂言誘拐をでっち上げます。誘拐されるのはなんと自分の妻。妻が誘拐されれば、金持ちの父親は身代金を払うだろうと云うわけです。じゃぁ、女房の父親から4万ドルを借りればいいのですが、過去の信用か何かが災いしてそれもかなわない身の上。勤め先もその父親が経営する自動車ディーラーで、まぁダメ男を地で行くようなものです。こういう役をやらせると、メイシーさんはピカイチです。自分の会社に勤める仮出所の男に、実行犯のスティーヴ・ブシェミとピーター・ストーメアのふたり紹介して貰います。
ふたりのうちブシェミがリーダーのような形で誘拐事件を仕切ります。一方、ストーメアは寡黙で何を考えているのか分からない不気味な男で、この特異な風貌の凸凹コンビが、ある意味ストーリーを引っ張ります。誘拐して逃げる途中にパトカーに止められるんですが、ストーメアは警官を射殺、さらに現場を見られた通りがかりの車を追いかけて運転手と同乗者を射殺。4万ドルを作るために考えたメイシーの狂言誘拐は、彼の思惑を超えてどんどん大きくなってゆきます。
この殺人事件に関わってくるのが地元の警察署長のフランシス・マクドーマンド。臨月が2ヶ月後に控える妊婦の警察官というのも映画史上初めてではないでしょうか。最後はフランシスが事件を解決するのですが、 このフウランシスの登場で「ファーゴ」という映画の特異性が一層際立ちます。「ファーゴ」には、ふと思いついた狂言事件がどんどん膨らんで最終的には6人の殺人事件に発展するという、人生の「陥穽」みたいなものが描かれています。その「陥穽」を際立たせるのが妊婦フランシス・マクドーマンド署長です。身二つのため旺盛な食欲で昼食を平らげ、大きなお腹をかばいながら歩きまわる姿はユーモラスです。そのユーモラスな姿で事件を捜査し、拳銃をぶっ放しで凶悪犯を逮捕します。シュールなコメディ以外の何物でもありません。
フランシス・マクドーマンド ウィリアム・H・メイシー
スティーヴ・ブシェミ ピーター・ストーメア
ラストシーンで、売れない夫の絵が3セントの切手の図柄に採用されたエピソードが披露されます。3セントの切手は誰も使わないと言う夫に対して、フランシスは、郵便料金が改定されれば足りない料金の支払で3セントの切手も使われるようになると慰め、後二ヶ月で子供が生まれるという夫婦の会話で幕となります。「ファーゴ」は、スティーヴ・ブシェミ、ピーター・ストーメアの世界とフランシス・マクドーマンドの世界の落差であり、その陥穽に落ち込んだウィリアム・メイシーのコメディーです。
ウィリアム・メイシーは「Uボート 最後の決断」でキャラクターに似合わずシリアスでしかも主演しています。と思ったら「団塊ボーイズ」で元に戻ったり、なかなか憎めいないキャラクターです。
制作:イーサン・コーエン
出演:フランシス・マクドーマンド ウィリアム・H・メイシー スティーヴ・ブシェミ ピーター・ストーメア
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