映画 カティンの森(2007ポーランド) [日記(2012)]
息詰まるような映画です。ソ連のカティンの森でポーランド兵が虐殺された事件は知っていましたが、映画を見て改めてこの事件を考えると暗澹たる気持ちになります。ドイツとソ連に国土を蹂躙された当時のポーランドを思うと、祖国があり主権があるということは、如何に幸せなことなのかと思います。
この時、ソ連は占領した地区の将校や役人、聖職者、学者などの知識人を根こそぎ収容所に入れてしまいます。おまけに、1万人(最終は2万人?)以上をスモレンスク郊外の森で虐殺してしまいます。
何故こんなことが起こったのか?。主人公の一人であるに アンジェイ大尉(アルトゥル・ジミイェフスキ) に語らせています。将校は、戦車や飛行機のように簡単には作れない、と。また、収容所でポーランド軍の大将は、こう言います。何があっても生き残れ、生き残って、ヨーロッパ地図に再びポーランドと云う国を甦らせよう、と。
ポーランドを占領したソ連にとって、ポーランド軍の将校や、ポーランドと云う国を動かす知識人は要らないわけです(赤軍と共産党がいる)。むしろ、抵抗運動の温床となるこれらの人々は邪魔なわけです。
ポーランド軍大尉であるアンジェイ、その父親で大学教授のヤンが殺されるのは、そうした背景があるわけです。
名が自分と入れ替わってしまったことを告白しています。後に、アンジェイ大尉の日記帳が家族の元に還り、大将が付けていた勲章が夫人に手渡されます。ドイツ軍の調査が徹底していた為、こう云ったドラマがあり得たんでしょうね。
映画には、虐殺現場の発掘調査を撮影した当時のフィルムが随所に挟み込まれ、後ろ手に縛られたポーランド将校が後頭部を拳銃で撃ち抜かれる虐殺シーンが描かれます。ワイダ監督の執念とも言える映像です。
戦争が終わり、ヨーロッパ地図に「ポーランド人民共和国」が書き加えられた後も、アンジェイ大尉の妻アンナ(マヤ・オスタシェフスカ)を中心に「カティン虐殺事件」の影が廻ります。
アグニェシュカはまた「ワルシャワ蜂起」(1944)にも加わったことが触れられています。「ワルシャワ蜂起」は、ナチ占領下のワルシャワで起きたポーランド国軍と市民による反乱です。ソ連が後ろで糸を引いていますが、扇動するだけで支援せず傍観を決め込みます。結局火力で劣るポーランド国軍は壊滅し、20万の犠牲者を出します。
ソ連とドイツに分割占領されたポーランドに何故国軍があったのか?、このポーランド国軍は、ロンドンの亡命政府の支配下にあるレジスタンス組織だそうです。ポーランド政府はドイツとソ連の侵攻を逃れてロンドンに亡命政府を樹立したように、反独とともに反ソでもあるわけです。戦後、反ソビエトの亡命政権の軍隊を認めるわけにはいかないと(国内には傀儡政権がある)、ポーランド国軍(レジスタンス)を解体し弾圧します。
ソ連は、東部戦線ではポーランド国軍将校を虐殺し、西部ではドイツと戦わせて挙げ句の果てに潰してしまうという挙に出たわけです。
アグニェシュカは「ワルシャワ蜂起」でドイツと戦い、今また、カティンで虐殺された兄を弔うためにソ連と戦うというポーランドの象徴でもあるんでしょう。
軍服の下から現れたキリスト
『カティンの森』を見て、大国に蹂躙されるポーランドに心を痛め、虐殺を犯したソ連に憤りを感じますが、日本帝国も日韓併合(1910)で他民族を支配下に置き、他国に傀儡国家・満州国(1932)を築くというソ連に似たような事をしています。
それにしても、80歳を超えてなお『カティンの森』で祖国と祖国に殉じた人々を描くアンジェイ・ワイダの執念は凄まじいものです。薦めです。
出演:マヤ・オスタシェフスカ アルトゥル・ジミイェフスキ
アンジェイ・ワイダ監督の作品は灰とダイヤモンド、
ナスターシャしか観た事無くて(^_^;)
「カティンの森」とても興味深く
是非とも観たくなりました。
ありがとうございます。
by rudiesgirl (2012-12-14 13:14)
是非、見て下さい。わたしは、『パリ、テキサス』を探してみます。
by べっちゃん (2012-12-14 19:55)
公開の時もDVDになってからも、なかなか見る気力と覚悟がなくそのままにしていました。近いうちに見てみます。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-12-15 09:19)
映画としての完成度より、アンジェイ・ワイダ執念の一作ですね。
こういう映画を見てナショナリズムを刺激されて、思わず保守に一票と云うことになりかねません(笑。
by べっちゃん (2012-12-15 11:34)
満州とポーランド侵攻は全然ちゃいますがな・・・
by ポルポルポルポト (2017-06-10 16:19)
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by Wajda Art (2018-04-20 20:51)