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BSシネマ 四十七人の刺客(1994日) [日記(2012)]

四十七人の刺客 [DVD]
 年末年始、NHK・BSは高倉健特集のようなもので、そのサワリでしょうか。
 原作は池宮彰一郎、脚本が池上金男。池上金男=池宮彰一郎で、名作『十三人の刺客(1963年)』の脚本家です。個人的には、監督の市川崑よりこっちの方が興味があります。

 「忠臣蔵」を仇討ちの美談ではなく、四十七人の侍による暗殺として描いたところが新しいわけです。従って(かどうか?)、大石内蔵助を高倉健が演じているんでしょう。高倉健は『幸福の黄色いハンカチ』以後、過去を背負った渋い役柄が多いですが、『昭和残侠伝』『網走番外地』の“健サン”ですから、刺客集団の親玉にはまことに相応しいキャスティングです。『幸福の黄色いハンカチ』島勇作の後ろには、花田秀次郎(『昭和残侠伝』)、橘真一(『網走番外地』)がいるから絵になるんですね。
 ということで、『四十七人の刺客』を東映・任侠映画として見てみました。あれ、この映画、東宝ですねぇ。

 お馴染みのストーリーですが、吉良上野介と縁戚関係にある上杉家の家老・色部又四郎(中井貴一)と大石内蔵助(高倉健)の謀略戦が前面に出てきます。「忠臣蔵」では、浅野内匠頭が江戸城で吉良上野介を斬りつけた原因というのが、吉良に贈賄しなかった為ということになっています。映画では、この強欲な吉良のイメージは、内蔵助が世間に流したデッチアゲということになっています。暗殺の正当性を作るために世論を操作したわけです。世論とは恐ろしいもので、吉良は幕府から見放され住まいを(攻撃しやすい郊外に)移らざる得なくなりますから、内蔵助の謀略は大成功。

 一方の吉良側の色部は、幕府の実力者・柳沢吉保を動かし、浅野家臣に就職先を斡旋するなど仇討を切り崩そうと画策します。討ち入りの12月14日も、吉良邸で催される茶会の情報を内蔵助側がキャッチしたということになっていますが、映画ではこれも色部の策略。3回の茶会を催して内蔵助たちを誘い込んだ、ということになっています(但し裏目に出た)。
 この映画は、ほとんど高倉健vs.中井貴一の知恵比べです。

 謀略と暗殺が前面に出て、普通であれば詳しく描かれる浅野内匠頭vs.吉良上野介の遺恨は全く描かれません。悪役・吉良のイメージは内蔵助の流した謀略ということになっていますから、遺恨の真相は最後まで明かされません。原作がどうだったか忘れましたが、これではスッキリしません。堺屋太一の『峠の群像』では、塩の生産流通という背景が描かれて説得力があったんですが。
 見せ場は討ち入りの暗殺、「殺陣」ということになるのですが、もうひとつです。『十三人の刺客(1963年)』やそのリメイクの方がはるかに迫力があります。

 で、『四十七人の刺客』は任侠映画だったかどうか。任侠映画は、悪役の親分(吉良上野介)の極悪非道によって主人公側に悲劇の犠牲者(浅野内匠頭)が出て、一宿一飯の恩義によって悪役の親分をたたき斬るカタルシスによって成り立っているわけです。ところが『四十七人の刺客』では、吉良上野介に悪役のイメージが全く無く、浅野内匠頭の切腹も悲劇性がありません。これでは任侠映画に成りようがありません。せいぜい、大石組と色部組の“出入り”ですね。

 “健さん”を見たい方は、来年の1月1日放映の『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』まで待ちましょう(笑。

監督:市川崑
出演:高倉健 中井貴一

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