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BSシネマ マーサの幸せレシピ(2001独) [日記(2013)]

マーサの幸せレシピ [DVD]
 原題:はBella Martha、英題はMostly Martha。
 リメイク→オリジナルの順に見るのは邪道だと書いたばかりで、またまた『幸せのレシピ(2007)』のオリジナルを見ました。NHKが放映してくれるのでありがたく鑑賞、この後『決断の3時10分』が控えてますが、これも見ます(笑。

 『幸せのレシピ』はキャサリン・ゼタ=ジョーンズに見惚れていたので、シェフのラブストーリー以外の細部は目に入らなかったんですね。ドイツ版はヒロインのマルティナ・ゲデックもきれいなんですが、こっちを見て、「食」というものが主題なんだということが恥ずかしながら改めて分かりました。オリジナルの方が映画の構造がはっきりしています。

 ポイントは、ドイツとイタリアなんですね。リメイク版でも、イタリア料理のシェフが登場しますが、舞台がNYか何処かで、イタリア系アメリカ人。オリジナルではこれがイタリア人です。さらに、ヒロインのマーサ(リメイクではケイト)の姪の父親がイタリア人という設定です。

 ハンブルグのレストランのシェフ、マーサ(マルティナ・ゲデック)の物語です。マーサは(たぶん)フレンチのシェフ。単なる調理師というより、店の客に挨拶に出たりする料理長で、お客はマーサの料理を食べに来るわけです。ドイツ料理というと、ソーセージ、ザワークラフト(キャベツの酢漬け?)、ジャガイモと不味いので有名です。映画の中で、肉の焼き加減でマーサと客がもめ、ソーセージが食べたいなら他所へ行けと啖呵をきっています。そこへゆくと、イタリア料理はフランス料理と並ぶ文化です(らしい→スパゲッティ以外あまり経験なし)。
 つまりですねぇ、(食文化の貧しい)ドイツ人のシェフがイタリアと出会う、というのがこの映画の構造かと思うのです。
 マーサはセラピーに通っています。何故通っているのかはマーサも知らず、医師の問いに、レストランのオーナーの命令で来ている、来ないと馘首になると答えています。オーナーは、シェフとしては一流だが、お客ともめる、友達もいない、ちょっと性格に問題のあるマーサを心配してセラピーに通わせているようです。これも映画の構造の重要な伏線です。

 マーサの妹?が交通事故で亡くなり、姪のリナを引き取ります。母親を亡くしたショックでリナは拒食症に陥り、マーサが腕によりをかけた料理も、「食べたくない」の一言で片付けてしまいます。妹の事故とリナの世話でレストランを休んでいる間に、オーナーはイタリア人のシェフ、マリオ(セルジオ・カステリット)を雇い入れます。このマリオは、調理場にラジカセを持ち込んで、カンツォーネやオペラのアリア?を流しながら調理をする陽気なイタリア人。マーサの癇に障ること甚だしいものがあります。マーサのドイツ気質は、陽気で遅刻常習犯のマリオを受け入れることが出来ないわけです。
 ひとつの調理場にふたりのシェフは並び立ちません。私を辞めさせるかマリオを追い出すかどちらかにしてくれ、みたいな険悪な雰囲気の中で、拒食症のリナがマリオの作ったパスタをむさぼるように食べます。マリオが自分のために作った所謂「まかない」ですね。マーサの手の込んだ本格的な料理より、マリオが片手間に、それも楽しそうに作ったパスタがリナに支持されるというわけです。つまり、厳密で厳格な、そして頑なマーサ的なものがマリオに敗れるわけです。ドイツ的なものがイタリアに敗れたとは言いませんが、マーサはまぁマリオの軍門に下るわけです、身も心も(笑。独伊の枢軸国関係ですね。

 もうひとつの「イタリア」が、リナの父親。マーサの妹はシングルマザーとしてリナを育て、父親は誰であるかをマーサにも明かしていません。マーサは、リナの記憶にあるイタリア人ジュゼッペという名を手がかりに父親探しを始めます。マリオの手伝いもあって、リナの父親は見つかり、リナは父親に引き取られます。やっと厄介者を本来の扶養者に預けたわけですからホッと一息、という筈が、マーサの心には空洞があいた様な寂しさを感じます。マーサはマリオといっしょにリナに会いにゆきます。イタリアの片田舎、木陰で一族揃って楽しく食事をするシーンは、「食べる」ということは楽しいことなんだよ、人生は楽しまなくては、とうことなんでしょうね。

 ラストです。セラピーの医師は、マーサに教えてもらった料理を作り、彼女に試食してもらいます。マーサの感想は「何かが足りない」。医師は「レシピ通りに作ったんだが・・・」。これがこの映画の答えです。

 でお薦めかというと、リメイク版よりオリジナルの方が面白いです。キース・ジャレットのピアノもいいです。

監督:ザンドラ・ネッテルベック
出演:マルティナ・ゲデック セルジオ・カステリット

タグ:BSシネマ
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